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更新日:2026/09/15

ピロリ菌感染と膵がんリスクの関連を示唆、胆道がんでは明確な関連なし——愛知県がんセンターの症例対照研究

愛知県がんセンター研究所がん疫学・予防研究分野の研究グループ(山本さやか氏、小柳(矢野)優子氏、松尾恵太郎氏ら)は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が膵がん(膵臓がん)のリスクとわずかに関連する一方、胆道がん(胆管がん・胆のうがんなど)とは明確な関連を認めなかったとする症例対照研究の結果を発表した。研究成果は2026年7月14日に国際的ながん専門誌 International Journal of Cancer にオンライン掲載され、愛知県がんセンターも2026年7月17日に研究成果を公表した。ピロリ菌は胃がんの確立したリスク因子だが、膵がんや胆道がんとの関係はこれまで結論が出ていなかった。今回は日本人集団で、遺伝的な体質や生活習慣の影響も考慮したうえで関連を検討した点が特徴である。

発表のポイント

• 愛知県がんセンターの症例対照研究(膵がん417例・胆道がん116例・がんではない対照3,086人)で、ピロリ菌感染と胆道がんの間には有意な関連を認めなかった※1※2
• 膵がん全体では、ピロリ菌抗体価が10 U/mL高くなるごとにリスクがわずかに上昇した(オッズ比1.04、95%信頼区間1.01〜1.07)※2
• 膵臓内の部位別では、抗体が検出されない萎縮性胃炎が膵頭部がんと(オッズ比3.04)、抗体陽性が膵体部がんと(オッズ比1.75)関連するなど、部位で異なるパターンがみられた※2

概要

研究グループは、同センターの病院疫学研究(HERPACC)に基づく2つの症例対照研究を用い、膵がん患者417人、胆道がん患者116人、がんと診断されていない対照3,086人を解析した※2。ピロリ菌感染は、血液中の抗体(抗体陽性)と、ペプシノゲン値をもとにした萎縮性胃炎(胃の粘膜が薄くやせた状態で、長期のピロリ菌感染で起こる)の有無、およびその組み合わせで評価した。年齢・性別・研究の版・がんに関わる遺伝子の病的バリアント(生まれつきの変異)の保因状況・喫煙・飲酒の影響を統計的に調整したうえで、オッズ比(あるがんへのなりやすさの指標)を算出している※2。

その結果、胆道がんについてはピロリ菌感染との明確な関連はみられなかった※2。一方、膵がんでは全体としてピロリ菌抗体価が高いほどリスクがわずかに高い傾向が示された(10 U/mL増加ごとにオッズ比1.04)※2。膵臓を部位別にみると、抗体が検出されないタイプの萎縮性胃炎は膵頭部がんと関連し(オッズ比3.04、95%信頼区間1.23〜7.54)、抗体陽性は膵体部がんと関連していた(オッズ比1.75、95%信頼区間1.10〜2.77)※2。ピロリ菌感染と遺伝子の病的バリアント・喫煙・飲酒との間に相互の影響(交互作用)は認められなかった※2。研究グループは、ピロリ菌感染が膵臓の特定の部位のがんリスクと関連する可能性を示すとしつつ、これは関連を示した観察研究であり、因果関係を証明したものではないと位置づけている※2。

この記事の読者にとっての意味

この研究は、特定の患者さんへの治療や検査を示すものではなく、集団を対象に「どんな要因ががんのなりやすさと関連するか」を調べた疫学研究である。今回の結果をもって、膵がんや胆道がんを予防するためにピロリ菌の検査や除菌を受けるべき、という段階には至っていない。膵がんに対して有効性が確立した集団向けの検診も、現時点では確立していない。

一方で、ピロリ菌は胃がんについては確立したリスク因子であり、胃がん予防の観点からの検査・除菌にはすでに意義がある。ピロリ菌感染が気になる場合や、胃の不調が続く場合は、まず胃の観点で主治医やかかりつけ医に相談するのが現実的だろう。主治医に確認するとしたら、「自分にピロリ菌検査を受ける意味があるか(主に胃がんの観点で)」「膵がん・胆道がんについて、自分の年齢や家族歴からみて注意すべき点は何か」といった点が論点になりうる。

膵がん・胆道がんそのものの症状や検査についてはすい臓がん、胆管がんを、ピロリ菌と関係の深い胃がんについては胃がんもあわせてご覧ください。

(Medister編集部 2026年9月15日)

本記事は2026年9月15日時点の公的機関の情報および原著論文をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

記載のオッズ比などの数値は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんのリスクや見通しを示すものではありません。

参考資料

  1. 愛知県がんセンター「研究成果(プレスリリース一覧):ピロリ菌感染と膵臓がんリスクとの関連を示唆-胆道がんでは明確な関連を認めず、膵臓内の部位別解析で異なる関連パターン-(2026年7月17日)」(最終確認日: 2026年9月15日)
  2. Yamamoto S, Koyanagi YN, Oze I, et al. Helicobacter pylori Infection and the Risk of Biliary Tract and Pancreatic Cancers: Subsite-Specific Associations in a Japanese Population. Int J Cancer. 2026 Jul 14. doi: 10.1002/ijc.70652. PMID: 42449537.(最終確認日: 2026年9月15日)

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