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更新日:2026/09/13

エンハーツ+ペルツズマブ、HER2陽性転移性乳がんの一次治療としてEUで承認 ── 日本は申請中

2026年9月1日、第一三共とAstraZenecaは、トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)とペルツズマブ(パージェタ)の併用療法が、HER2陽性(HER2たんぱくが過剰に発現しているタイプ)の切除不能・転移性乳がんに対する一次治療として欧州委員会(EU)に承認されたと発表した※1。根拠となったのは第III相ランダム化比較試験DESTINY-Breast09であり、10年以上ぶりとなる新たな一次治療の選択肢として位置づけられている※1。なお、日本ではこの「一次治療でのエンハーツ+ペルツズマブ併用」は2026年9月時点で未承認であり、第一三共が2025年10月に効能・効果を追加する一部変更承認を申請し、審査中の段階にある※3。エンハーツ自体は、HER2陽性乳がんの二次治療以降を対象に日本を含む複数の国・地域ですでに承認・使用されているが※3、今回の「一次治療でのペルツズマブとの組み合わせ」は国内ではまだ受けられない。

発表のポイント

• エンハーツ+ペルツズマブ併用は現行の標準治療THP(タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ)と比較して無増悪生存期間の中央値を約14カ月延長した(40.7カ月 対 26.9カ月)※2
• 確定奏効率は85.1%で、完全奏効が15.1%と標準治療(8.5%)の約2倍に達した※2
• 間質性肺疾患(ILD)が併用群の12.1%に発生し、うち2例が死亡(Grade5)であった点は重要な安全性シグナルである※2

概要

DESTINY-Breast09は、HER2陽性(IHC 3+またはISH陽性)の切除不能・転移性乳がんで化学療法・HER2標的治療の治療歴がない成人患者、または術前・術後のHER2標的治療から6カ月超が経過した患者を対象とした第III相ランダム化比較試験である※2。エンハーツ+ペルツズマブ群383例と標準治療(THP)群387例を比較し、2025年2月26日を中間解析のデータカットオフとした結果が報告されている※2。

主要評価項目である無増悪生存期間(PFS:がんが進行するまでの期間)の中央値は、併用群40.7カ月に対しTHP群26.9カ月で、進行または死亡のリスクが44%低減した(ハザード比0.56、95%信頼区間0.44〜0.71、p<0.00001)※2。確定奏効率は85.1%対78.6%、奏効期間の中央値は39.2カ月対26.4カ月だった※2。

安全性の面では、Grade3以上の有害事象は両群で同程度(63.5% 対 62.3%)だったが、間質性肺疾患(ILD)・肺臓炎(肺に炎症が起きる副作用で、エンハーツの既知リスクのひとつ)の発生率は、併用群12.1%に対しTHP群1.0%と大きく異なっており、Grade5(死亡)が併用群で2例確認された※2。この安全性のシグナルは、使用にあたって専門医による慎重なモニタリングが必要であることを示している。

この記事の読者にとっての意味

この試験の対象となる患者は、HER2陽性(IHC 3+またはISH陽性)と確認されており、転移・再発があって一次治療を検討している方、またはこれまでにHER2標的治療を受けたことがない(あるいは終了から6カ月超が経過している)方である。

日本での現状をまとめると、2026年9月時点でこの「エンハーツ+ペルツズマブ一次治療」は国内未承認であり、保険診療としては受けられない。日本での現行の一次治療の標準は、タキサン系の抗がん剤にトラスツズマブとペルツズマブを組み合わせるTHP療法であり(薬剤の全体像は抗がん剤一覧も参照)、今回の併用については第一三共が国内で承認申請を行っている段階である※3。承認の時期や詳細は公式の発表をもとに主治医に確認することが勧められる。承認申請中の薬を治験以外で先行して受けることは、原則として認められていない。

主治医に確認するとしたら、「自分の腫瘍がHER2陽性(IHC 3+またはISH陽性)と確定しているか」「日本での承認の見通しについてどう考えるか」「エンハーツを使う際のILD(間質性肺疾患)のリスク管理として何が必要か」といった点が論点になりうる。

乳がんの治療全般については乳がん、副作用・合併症の情報についてはがん治療の副作用と合併症もあわせてご覧ください。

(Medister編集部 2026年9月13日)

本記事は2026年9月13日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

記載の臨床試験の数値は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。

参考資料

  1. 第一三共・AstraZeneca「エンハーツ+ペルツズマブ、HER2陽性転移性乳がんの一次治療としてEUで承認」(2026年9月1日)(最終確認日: 2026年9月13日)
  2. Tolaney SM, et al. N Engl J Med. 2026;394(6):551-562. DOI:10.1056/NEJMoa2508668(PMID 41160818)(最終確認日: 2026年9月13日)
  3. 第一三共「トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201)とペルツズマブの併用療法のHER2陽性乳がん一次治療を対象とした日本における一部変更承認申請について」(2025年10月7日)(最終確認日: 2026年9月13日)

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