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更新日:2026/09/11

切除できない肝細胞がんのTACEに免疫薬+分子標的薬を上乗せ――国際共同第III相EMERALD-3で無増悪生存が延長

2026年9月、国際共同第III相試験「EMERALD-3」の結果が医学誌ランセット・オンコロジーに掲載された※1。手術・焼灼・移植の対象にならず塞栓療法(TACE)の適応となる肝細胞がんを対象に、TACEに免疫チェックポイント阻害薬2剤(STRIDE)と分子標的薬レンバチニブを上乗せしたところ、TACE単独に比べて病気が悪化するまでの期間(無増悪生存期間)が有意に延長した。ただしこれは治験段階の結果であり、現時点で国内でこの併用が承認された標準治療になったわけではない。

発表のポイント

• 対象はTACEの適応となる切除不能な肝細胞がん(肝機能Child-Pugh分類A)の760人
• 主要評価項目の無増悪生存期間は中央値13.0カ月(併用群)対9.8カ月(TACE単独群)、ハザード比0.70で有意に延長※1
• 全生存期間は現時点で有意差に至らず(39.5カ月対34.7カ月、ハザード比0.84)、追跡が継続されている※1

概要

TACE(経カテーテル的動脈化学塞栓療法)は、肝臓の腫瘍を養う血管に薬剤と塞栓物質を注入してがんを兵糧攻めにする、肝細胞がんの標準的な治療の一つ。EMERALD-3試験は、21カ国177施設で行われた無作為化・非盲検の国際共同第III相試験で、日本からは近畿大学の工藤正俊医師らが筆頭著者として参加した※1。

参加者はTACEに加えて、(1)STRIDE(トレメリムマブ1回投与+デュルバルマブの定期投与という免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせ)とレンバチニブを併用する群、(2)STRIDEのみを併用する群、(3)TACE単独群の3群に割り付けられた。主要評価項目である(1)対(3)の無増悪生存期間の中央値は13.0カ月対9.8カ月(ハザード比0.70、95%信頼区間0.57〜0.86、p=0.0007)で、統計学的に有意な延長を示した※1。一方、副次評価項目の全生存期間は39.5カ月対34.7カ月(ハザード比0.84、95%信頼区間0.65〜1.09、p=0.18)で、現時点では有意差に達しておらず、最終解析に向けて追跡が続いている※1。

安全性では、併用群でグレード3〜4の高血圧が12%に、重篤な有害事象が併用群64%・STRIDE併用群51%・TACE単独群23%に認められ、治療関連死が併用群で2%(287人中7人)報告された※1。免疫薬と分子標的薬を上乗せする分、副作用の負担も増える点は見落とせない。

この記事の読者にとっての意味

対象となるのは、手術・焼灼・肝移植の対象にはならないものの、まだ肝機能が保たれ(Child-Pugh分類A)TACEの適応となる肝細胞がんの患者さん。この試験結果は「TACEに免疫薬と分子標的薬を組み合わせると、がんの進行を遅らせられる可能性がある」ことを示したものだが、あくまで治験の結果であり、この併用がそのまま国内の保険診療で受けられる標準治療になったわけではない点に注意が必要。デュルバルマブ・トレメリムマブ・レンバチニブはいずれも国内で肝細胞がんに承認された薬だが、今回のTACEと組み合わせる使い方は現時点で確立された治療ではない。

主治医に確認するとよい論点として、「自分の肝がんが今どの段階で、TACEの適応かどうか」「現在受けている治療の目的と、次の選択肢は何か」が挙げられる。生存期間そのものの延長はまだ確認されておらず、副作用も増えることを踏まえ、期待と負担の両面を主治医と話し合うことが大切。肝細胞がんの全体像は肝細胞がんの治療を、免疫薬の仕組みは免疫チェックポイント阻害剤も参考にしてほしい。

(Medister編集部 2026年9月11日)

本記事は2026年9月11日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。

記載の生存期間の数値は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。また本記事で紹介した併用療法は治験段階のものであり、国内で承認された標準治療ではありません。

参考資料

  1. Kudo M, et al. “Durvalumab and tremelimumab, with or without lenvatinib, combined with transarterial chemoembolisation in participants with embolisation-eligible hepatocellular carcinoma (EMERALD-3): a global, randomised, open-label, sponsor-blinded, phase 3 study.” Lancet Oncol. 2026;27(9):1077-1093. DOI: 10.1016/S1470-2045(26)00278-0(PMID 42636832)(最終確認日: 2026年9月11日)

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