更新日:2026/09/06
脳幹・視床に発生する希少な脳腫瘍 びまん性正中膠腫に初の国内承認申請——ドルダビプロン塩酸塩
2026年1月30日、大原薬品工業はドルダビプロン塩酸塩(国内開発番号:OP-10)について、「H3 K27M変異を有するびまん性正中膠腫」を対象疾患として国内での製造販売承認申請を行ったと発表した※1。びまん性正中膠腫は脳幹や視床、脊髄などに発生する浸潤性の神経膠腫(グリオーマ)で、国内にはこれまで承認された治療薬が存在しなかった。今回の申請は、この領域で初めての承認申請候補となる。米国では2025年8月にJazz Pharmaceuticalsが同薬を「MODEYSO」の販売名で迅速承認を取得しているが、国内での承認可否・時期は現時点で未定である※1。
発表のポイント
• 2026年1月30日、大原薬品工業がドルダビプロン塩酸塩(OP-10)について、H3 K27M変異を有するびまん性正中膠腫を対象に国内製造販売承認申請を実施した※1
• 国内ではこの疾患に対して承認された治療薬がなく、初の申請薬候補となる※1
• 米国では2025年8月に迅速承認済み(販売名:MODEYSO)。国内の承認可否・時期は未定※1
概要
びまん性正中膠腫は、脳の正中線に近い部位——視床・脳幹(中脳・橋・延髄)・脊髄など——に発生する浸潤性の神経膠腫(グリオーマ)の総称である。大多数の腫瘍でH3 K27M変異(ヒストンH3.3またはH3.1遺伝子で、N末端から27番目のアミノ酸であるリジンがメチオニンに置き換わる変異)が認められ、2016年のWHO中枢神経系腫瘍分類では最も悪性度の高いGrade IVと定義されている※1。手術で可能な限り腫瘍を摘出したうえで放射線療法を行うのが基本とされるが、発生部位によっては手術が難しい場合があり、これまで国内で承認された薬物療法がなかった難治性の腫瘍である※1。
ドルダビプロン塩酸塩は、主に2つの作用が想定されている薬剤である。一つはミトコンドリアに存在するプロテアーゼClpP(カゼイン分解プロテアーゼP)を活性化して腫瘍細胞の代謝障害やミトコンドリアの損傷を引き起こす作用、もう一つはドパミンD2受容体を阻害(アンタゴニスト)する作用で、これらを通じて統合的ストレス応答経路が活性化され、腫瘍細胞のアポトーシス(細胞死)が促されると考えられている※1。今回の申請は国内外の複数の臨床試験の成績に基づくとされているが、具体的な試験の名称や有効性の数値はプレスリリースには明記されていない※1。
大原薬品は2019年にOncoceutics社(後にJazz Pharmaceuticalsが買収)から国内での開発・販売ライセンスを取得し、開発を続けてきた。なお米国での「迅速承認」は通常より早い段階で承認する制度によるもので、海外で承認されていることは、そのまま国内で使えることを意味しない※1。
この記事の読者にとっての意味
対象となるのは、H3 K27M変異を有するびまん性正中膠腫の患者さんとその家族である。脳幹・視床・脊髄などに発生する希少な神経膠腫で、米国では1歳以上の小児から成人までを対象に承認されている※1。
現時点では国内は承認申請中(審査中)であり、保険診療としてはまだ使えない。米国ではすでに迅速承認を経て入手可能な状況になっているが、国内での承認可否・時期は未定である。これまで国内に承認薬がなかった領域に初めての申請が出された段階であり、今後の審査の動向を注視する必要がある。
主治医に確認する論点としては、「H3 K27M変異の有無がどのように調べられているか・あるいは検査可能か」「現在利用できる国内の治療選択肢と今後の展望についてどう考えているか」といった点が一つの手がかりになるかもしれない。遺伝子変異の検査についてはがん遺伝子パネル検査の解説を、脳腫瘍全般の基本情報については脳腫瘍の解説記事をあわせて参照してほしい。
(Medister編集部 2026年9月6日)
本記事は2026年9月6日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 大原薬品工業「ドルダビプロン塩酸塩(国内開発番号:OP-10)製造販売承認申請のお知らせ」(最終確認日: 2026年9月6日)


















