更新日:2026/09/04
BCGが効かない上皮内がんに「イネレクスゾ」国内承認――膀胱内に留置して抗がん剤を持続放出、膀胱温存の新選択肢
ヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソン)は2026年8月24日、膀胱がんの治療薬「イネレクスゾ」(一般名:ゲムシタビン塩酸塩)の製造販売承認を取得したと発表した※1。対象は、BCG膀胱内注入療法の後に残ったり再発したりした上皮内がんを伴う「高リスク筋層非浸潤性膀胱がん」である。膀胱内に留置して抗がん剤を持続的に放出する新しいタイプの製剤で、膀胱を残す治療の選択肢が広がる。
発表のポイント
• ヤンセンファーマが2026年8月24日、イネレクスゾ膀胱内システム225mg(一般名ゲムシタビン塩酸塩)の製造販売承認を取得。BCG療法後に残存・再発した上皮内がんを伴う高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(HR-NMIBC)が対象※1
• 膀胱内に留置し、抗がん剤を約3週間かけて膀胱内へ持続的に局所送達する膀胱内投与用製剤。外来で留置でき、留置後は医療機関で待機せず帰宅できると見込まれる※1
• 承認の根拠となった国際共同第IIb相SunRISe-1試験(非盲検・非対照、コホート2)では、完全奏効率82.4%(95%信頼区間72.6–89.8)、奏効期間中央値25.8カ月、1年時点での膀胱全摘未実施率86.6%が示された※1※2
概要
筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)は、がんが膀胱の壁の筋層まで達していない段階を指す。なかでも高リスクに分類された患者には、経尿道的な切除の後にBCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱内に注入する治療が標準的に用いられてきた。しかしBCG療法の後に上皮内がん(CIS、膀胱の内壁の表層にとどまるがん)が残ったり再発したりした場合、現在の診療ガイドラインでは膀胱全摘除術が推奨され、膀胱の温存を望む患者さんの選択肢は限られていた※1。
イネレクスゾは、有効成分にゲムシタビン塩酸塩という抗がん剤を用い、膀胱内に留置することで約3週間にわたり薬を膀胱内へ持続的に放出するように設計された膀胱内投与用製剤である。医療従事者が外来で挿入用カテーテルを使って膀胱に留置する※1。承認は、BCGに不応の上皮内がんを伴うHR-NMIBC患者を対象とした国際共同第IIb相SunRISe-1試験(非盲検・非対照の単群試験)の結果に基づく※1※2。コホート2では、82.4%が完全奏効(評価の時点でがんの徴候が認められない状態)に達した※1。報告された重大な副作用は尿路感染で、そのほか10%以上にみられた副作用として頻尿・排尿困難・尿意切迫・血尿・尿路痛などがある※1。筑波大学の西山博之教授は、BCG後に上皮内がんが残存・再発した場合は現在膀胱全摘除術が推奨されており膀胱温存を希望する患者の選択肢が限られていたとしたうえで、適切な患者において膀胱温存を支える新たな選択肢になりうるとコメントしている※1。
この記事の読者にとっての意味
この承認が関係するのは、BCG療法の後に上皮内がんが残った・再発した高リスクNMIBCの患者さんである。従来はこの局面で膀胱全摘除術を検討せざるを得ないことがあった。承認日は2026年8月24日で、国内承認済みの内容だ。ただし薬価収載や発売の時期は本稿の時点では確認できておらず、実際に受けられる時期・施設・保険適用は今後、医療機関で確認する必要がある。
同じ高リスクNMIBCでは、BCGにデュルバルマブ(イミフィンジ)を組み合わせる免疫併用療法も国内で承認されている(当サイト既報)。ただしそちらはBCGによる治療がまだ始まっていない段階の高リスクNMIBCを主な対象とするPD-L1免疫チェックポイント阻害剤であり、イネレクスゾはBCGが効かなくなった上皮内がんを対象とする膀胱内留置型の抗がん剤で、作用のしくみも対象となる患者も異なる。自分がどちらの状況(BCG未治療か、BCG後の残存・再発か)に当たるかによって、検討する薬が変わる点が主治医に確認する論点になりうる。治療の選択はあくまで主治医との相談によるものであり、この記事が方針を指示するものではない。
膀胱がんの基本的な情報は膀胱がんのページで、新しい薬が承認される仕組みや未承認・適応外の考え方は未承認薬・適用外薬のページで、それぞれ詳しく解説している。
(Medister編集部 2026年9月4日)
本記事は2026年9月4日時点の公的機関の情報および企業の公式発表をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の完全奏効率などの数値は臨床試験に参加した集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- Johnson & Johnson(ヤンセンファーマ株式会社)「イネレクスゾ承認。BCG不応の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん治療を変える新たな選択肢」(2026年8月24日)(最終確認日: 2026年9月4日)
- ClinicalTrials.gov「SunRISe-1試験(NCT04640623)」(最終確認日: 2026年9月4日)


















