更新日:2026/09/02
糖尿病があっても抗がん剤の吐き気どめ「オランザピン」が条件付きで使えるように——厚労省が禁忌を一部解除
強力な吐き気どめとして知られる「オランザピン」は、これまで糖尿病の患者さんには使えない薬とされてきました。厚生労働省は2026年8月25日付の通知で添付文書の改訂を指示し、抗がん剤による吐き気・嘔吐の治療に限って、糖尿病またはその既往がある患者さんへの禁忌を解除しました※1。統合失調症などの精神科の治療では、これまでどおり糖尿病患者さんへの禁忌が維持されます。日本癌治療学会も制吐薬ガイドラインの速報を発出し、条件付きで適応を認める方向を示しています※3。糖尿病を持ちながら抗がん剤治療を受ける患者さんや家族にとって、吐き気どめの選択肢が広がる変化です。
発表のポイント
• 厚労省が2026年8月25日付通知で、オランザピン(経口剤)の添付文書を改訂するよう指示した※1
• 抗がん剤の吐き気・嘔吐の適応に限り、糖尿病患者への禁忌が解除され、条件付きの「警告」に移行した※1
• 日本癌治療学会が制吐薬適正使用ガイドライン速報を発信し、学会側の運用方針が示された※3
概要
オランザピンは主に精神科で使われる薬ですが、高度の催吐性を持つ抗がん剤(シスプラチンなど)に伴う強い吐き気・嘔吐を抑える薬としても使われています。高度催吐性(吐き気を起こしやすい)抗がん剤に対しては、4剤を組み合わせた制吐療法の1剤として学会ガイドラインに推奨されてきた薬です※3。
これまで、糖尿病の患者さんやその既往のある患者さんは、血糖値が悪化するリスクから「禁忌」——使ってはいけない——と位置づけられていました。
今回の改訂のきっかけは、2026年7月29日に開催された厚生労働省の医薬品等安全対策調査会で、オランザピンの有効性と安全性が改めて検討されたことです※2。その結果、抗がん剤の吐き気・嘔吐という適応に限って、糖尿病患者への禁忌が外されることとなりました。
改訂後の添付文書では、糖尿病またはその既往のある患者さんに投与する場合について、次の条件が示されています※1。治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。血糖コントロールが良好な患者さんにのみ使うこと。投与量・投与期間は必要最小限とすること。投与前および投与期間中は毎日頻回に血糖値をモニタリングし、投与後も血糖値が安定するまで継続すること。緊急時に十分に対応できる体制のもとで行うこと。血糖値の具体的な目標は医療機関の判断によります。
一方、統合失調症や双極性障害などの精神科適応では、従来と同様に糖尿病患者さんへの禁忌は維持されます※1。今回の変更は抗がん剤の吐き気・嘔吐への使用に限った措置です。
日本癌治療学会の速報では、化学療法を受ける糖尿病患者さんにオランザピンを用いる場合は入院管理のもとで血糖管理を行いながら実施するとされています。化学療法前の検査で糖尿病が判明した場合や血糖コントロールが良好でないと判断される場合は、内分泌内科・糖尿病内科への相談が求められています※3。
この記事の読者にとっての意味
今回の変更が特に関係するのは、糖尿病またはその既往があり、シスプラチンなど強い吐き気を起こしやすい抗がん剤の治療を受けている方、あるいはこれから治療を控えている方です。
オランザピンは保険適用済みの既承認薬です。今回の添付文書の改訂によって、これまで糖尿病があるため使えなかったこの薬が、条件を満たせば選択肢になりえます。ただし「使えるかどうか」は血糖のコントロール状況や入院管理が可能かどうかなど、個々の状況によって主治医が判断するものです。「条件を満たしているから自分に使える」と自己判断はせず、担当医への相談が前提になります。
主治医に相談する際の論点として、「自分の現在の血糖の状態でオランザピンの適応となるか」「使う場合は入院管理が必要になるか」「糖尿病を診ている内分泌内科・糖尿病内科の医師と連携が必要か」などが考えられます。吐き気は抗がん剤治療中のQOL(生活の質)に大きく影響します。副作用との向き合い方についてはがん治療の副作用と合併症も参考にしてください。
吐き気どめの選択は支持療法(治療を続けるための補助的なケア)の一部です。支持療法・緩和ケアの考え方については緩和医療とはもあわせてご覧ください。
(Medister編集部 2026年9月3日)
本記事は2026年9月3日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省「医薬安発0825第1号『使用上の注意』の改訂について(令和8年8月25日)」(最終確認日: 2026年9月3日)
- 厚生労働省「第5回医薬品等安全対策調査会(令和8年7月29日開催)」(最終確認日: 2026年9月3日)
- 日本癌治療学会「制吐薬適正使用ガイドライン速報発信のお知らせ」(最終確認日: 2026年9月3日)


















