更新日:2026/08/24
肺の末梢病変、クライオ生検が従来法より診断率が高い——日韓台馬の国際共同試験
肺に小さな影(末梢肺病変)が見つかったとき、確定診断のために気管支鏡を使って組織を採る検査が行われることがあります。国立がん研究センター中央病院らの研究グループは、この検査で用いる「クライオ生検(凍結生検)」という手法が、従来の鉗子(かんし)生検よりも診断率を有意に高めることを、日本・韓国・台湾・マレーシアの4カ国6施設による国際共同ランダム化比較試験で示しました。論文は2026年7月30日付けで医学誌『The Lancet Respiratory Medicine』に掲載されています※1。クライオ生検はまだ日本の肺がん診療ガイドラインに正式に組み込まれておらず、現時点では実施できる施設が限られる可能性があります。
発表のポイント
• クライオ生検の組織診断率83.4%は、従来の鉗子生検74.9%を8.5ポイント上回り、統計的にも有意な差が示された(p=0.0023)※1
• 肺がん診療で重要な遺伝子パネル検査の成功率もクライオ生検群97.6%、従来法群90.2%と高かった※1
• クライオ生検では中等度の出血・気胸が増加する可能性があるが、重度の出血は両群とも1%未満で、生命を脅かす合併症・死亡は両群ともに認められなかった※1
概要
クライオ生検とは、冷却したプローブ(探針)を気道の奥まで送り込み、マイナス数十度の低温で組織を瞬間的に凍結して採取する手法です。従来の鉗子生検(金属製の鉗子で組織を挟み取る方法)と比べ、より大きく形の整った組織を採れる点が特徴とされています※1。
今回の試験には、胸部CTで長径30 mm以下の末梢肺病変が確認され、気管支鏡による診断が必要と判断された患者660人が登録されました。うち病変への気管支鏡の到達が確認された627人を解析対象として、クライオ生検と従来の鉗子生検にランダムに割り付けています。登録患者の内訳は日本521人、韓国61人、台湾38人、マレーシア7人でした※1。
主要評価項目である組織診断率はクライオ生検群83.4%、従来法群74.9%で、8.5ポイントの差が確認されました(p=0.0023)。病変が比較的辺縁の位置にある、診断が難しい症例に限った分析でもクライオ群76.7%、従来法群64.7%(p=0.0060)と、クライオ生検の高い診断率が示されています※1。
近年の肺がん診療では、確定診断と同時に遺伝子変異を調べる「遺伝子パネル検査」を行うことが増えています。採取した組織を用いたこの検査の成功率は、クライオ生検群97.6%、従来法群90.2%でした※1。
安全性については、クライオ生検で気管支鏡下での止血処置が必要な中等度の出血や気胸の発生が従来法より多い傾向が見られました。ただし重度の出血は両群とも1%未満で、生命を脅かす合併症や死亡は両群ともに認められませんでした※1。
この記事の読者にとっての意味
この試験の対象は、肺に長径30 mm以下の病変があり、気管支鏡検査で組織を採ることになった患者さんです。肺がん、またはその疑いで気管支鏡による精密検査を予定している方に特に関係する内容です。
現時点での位置づけとして、今回の結果はランダム化比較試験という信頼性の高い手法で示されたものですが、クライオ生検は日本の肺がん診療ガイドラインに正式には組み込まれていません(研究で有効性が示された段階で、標準的な検査法として位置づけられるのはこれからです)。実施できる施設かどうかは、受診先の病院によって異なる可能性があります。
気管支鏡検査を予定している場合、「クライオ生検(凍結生検)はこちらで実施できますか」「自分の病変のサイズや場所を考えると、どちらの手法が適していますか」という点を主治医に確認してみることは、選択肢を知るうえで一つの論点になります。ただし手法の選択は病変の位置・患者さんの状態・施設の体制などを総合的に判断するものであり、主治医との相談が不可欠です。
肺がんの診断・治療全般については肺がんの解説記事、肺の精密検査で用いられるPET-CT検査についてはPET-CT検査の記事もあわせてご参照ください。
(Medister編集部 2026年8月25日)
本記事は2026年8月25日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター「従来の生検法では診断が難しい肺の末梢病変に対するクライオ生検の有効性を国際共同試験で証明」(2026年8月17日発表、最終確認日: 2026年8月25日)/Abe S et al. The Lancet Respiratory Medicine. 2026. DOI: 10.1016/S2213-2600(26)00191-8


















