更新日:2026/08/22
肺がんの生検で「凍結採取法(クライオ生検)」が従来法を上回る成績——国際共同RCTでゲノム検査への適性も向上
肺の奥にある小さな病変(末梢病変)の診断に使う「クライオ生検(凍結生検)」が、従来の鉗子生検・吸引針生検よりも高い組織診断率を示したとする国際共同ランダム化比較試験(RCT)の結果を、国立がん研究センターが2026年8月17日に発表した。日本・韓国・台湾・マレーシアの627人が参加した試験で、クライオ生検群の組織診断率は83.4%と従来法の74.9%を有意に上回り(p=0.0023)、良質な組織が確保されることでがん遺伝子パネル検査の解析成功率も向上した。論文は医学誌『The Lancet Respiratory Medicine』に2026年7月30日付けで掲載された。
発表のポイント
• クライオ生検の組織診断率 83.4% vs 従来法(鉗子生検・吸引針生検)74.9%(p=0.0023)※1
• 位置が難しい「困難症例」でも 76.7% vs 64.7%(p=0.0060)と優位を維持※1
• 採取組織でのがん遺伝子パネル検査の解析成功率 97.6% vs 90.2%※1
概要
「末梢病変」とは肺の中央部の気管支から離れた場所にある病変のことで、気管支鏡が届きにくく組織を採取しにくい部位にある。がんの確定診断には病変から組織を採る「生検」が欠かせないが、現在は細い管から鉗子(はさみ状の器具)で組織をつまむ鉗子生検や、針で吸引する吸引針生検が標準的に行われている。
クライオ生検(凍結生検)は、先端が急速に冷却されるプローブを病変に押し当て、凍結させた組織ごと引き抜いて採取する方法で、鉗子生検より大きな組織片を得やすい特徴がある。手技自体は以前から存在するが、肺の末梢病変に対して従来法と正面から比較した大規模なRCTはこれまで実施されていなかった。
今回の試験は日本主導の国際共同RCTで、長径30mm以下の末梢肺病変を持つ627人を対象とした。主要評価項目の組織診断率においてクライオ生検は83.4%を達成し、従来法の74.9%を統計的に有意に上回った(p=0.0023)※1。病変の場所が特に難しい症例に限っても76.7% vs 64.7%(p=0.0060)とクライオ生検の優位が示された※1。
さらに採取した組織をがん遺伝子パネル検査(複数の遺伝子変異をまとめて調べる検査。がんの種類や性質を遺伝子レベルで調べ、治療薬の選択に役立てる)に使えるかどうかを示す解析成功率は、クライオ生検群97.6%・従来法90.2%と差があった※1。良質な組織を十分に採取できるかどうかは、その後の治療戦略の立案に直結する点である。
研究グループは、出血や気胸(肺に空気が漏れる合併症)への対策が引き続き必要であるとしながらも、今後の診療ガイドライン改訂の科学的根拠になると期待されると述べている※1。
この記事の読者にとっての意味
対象となるのは主に、肺がんが疑われ肺の末梢に病変があり、生検の方法をこれから検討する段階の患者さんとその家族です。今回の結果は「どの生検法を選ぶかが、その後のがん遺伝子パネル検査に使える組織を確保できるかに関わりうる」ことを示しています。
クライオ生検はすべての病院で同様に実施できるわけではなく、対応する機器や技術の習熟が必要な手技です。今回の試験で重要な結果が示されましたが、日本の診療ガイドラインへの反映はこれからの段階であり、どの施設でも受けられる標準治療として確立されているわけではありません(臨床研究段階)。主治医に「自分の病変の場所でクライオ生検が適応になるか」「この施設で実施可能か」「遺伝子パネル検査を見据えてどの生検法が向いているか」などを確認することが、一つの論点になります。
肺がんについてより詳しく知りたい方は肺がんの基礎知識を、がん遺伝子パネル検査についてはがん遺伝子パネル検査とはをあわせてご覧ください。
(Medister編集部 2026年8月23日)
本記事は2026年8月23日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。


















