更新日:2026/08/20
肺の末梢病変、クライオ生検で診断率と遺伝子解析精度が向上――日・韓・台・マレーシア4か国ランダム化比較試験
国立がん研究センター中央病院の松元祐司医長らの研究グループは2026年8月17日、肺の末梢(奥)に見つかった病変の診断において、極低温で組織を採取する「クライオ生検」が従来の鉗子生検より診断率・遺伝子解析成功率ともに上回ることを示した国際共同ランダム化比較試験の結果を発表した※1。日本・韓国・台湾・マレーシア4か国6施設が参加し、627人を対象に実施された試験の成果であり、結果は英医学誌「ランセット呼吸器医学(The Lancet Respiratory Medicine)」に掲載された※1。従来の気管支鏡下生検では診断が難しかった末梢の小さな病変に対して、より高い診断成功率と、ゲノム医療につながる遺伝子解析に必要な組織量の確保率が確認された点が新しい。
発表のポイント
• クライオ生検の組織診断成功率は83.4%で、鉗子生検の74.9%を8.5ポイント上回った(※1)
• がんの遺伝子パネル検査に必要な組織量をクライオ生検では97.6%の症例で確保できた(鉗子生検90.2%)(※1)
• 中等度の出血や気胸がクライオ生検群でやや多く認められたが、生命に関わる重篤な合併症は両群ともに報告されていない(※1)
概要
クライオ生検とは、気管支鏡(気道を通す細長い内視鏡)の先端に極低温のプローブ(探針)を取り付け、組織を瞬間的に凍結させて採取する方法を指す。組織を鉗子(はさみ状の器具)でつまみ取る従来の鉗子生検より大きな組織塊を取り出しやすいことが特徴とされてきたが、末梢病変での診断精度を鉗子生検と直接比較したランダム化比較試験(患者をくじ引き的に2群に振り分ける、信頼性の高い試験デザイン)はこれまで少なかった。
今回の試験では、胸部CT検査で長径30mm以下の末梢肺病変が確認され、気管支鏡による診断が必要と判断された患者627人(日本521人、韓国61人、台湾38人、マレーシア7人)を対象とした※1。クライオ生検群と従来法群(鉗子生検・吸引針生検)にランダムに割り付け、診断成功率と安全性を比較した。
組織診断成功率はクライオ生検83.4%に対し従来法74.9%(差8.5ポイント)であり、特に病変の周辺部ではクライオ76.7%・従来法64.7%と差が広がった※1。ゲノム医療につながる遺伝子パネル検査に必要な組織量については、クライオ生検で97.6%、従来法で90.2%が確保できた※1。安全性については、中等度の出血や気胸はクライオ生検群でやや多く認められたが、重度の出血は両群ともに1%未満で、生命を脅かす合併症の報告はなかった※1。試験の実施機関は、これらの結果が診療ガイドラインの改訂における重要な根拠になりうると述べている※1。
この記事の読者にとっての意味
肺の末梢(奥の細い気管支の近く)に小さな病変が見つかり、「気管支鏡で生検しましょう」と説明された患者さんや家族の方にとって関連する情報である。今回の試験で対象となったのは、CTで発見された長径30mm以下の末梢肺病変で、気管支鏡による診断が必要とされた方々だ。
クライオ生検は日本の施設も参加した国際共同試験で有効性と安全性が検討されたが、国内でのクライオ生検の普及は途上にあり、実施できる施設・症例は現時点で限られている。今回の試験はアジア4か国の特定施設で行われており、結果をそのまま一般的な日本全国の医療状況に当てはめるには慎重な解釈が必要である。
「今回予定している生検はクライオ生検と鉗子生検のどちらですか」「当院でクライオ生検は実施できますか」という点を主治医に確認することが、自分の診断状況を理解するうえでの論点となりうる。また、診断後のがん遺伝子パネル検査につながる組織量の確保という観点も、あわせて主治医と話し合うきっかけになるかもしれない。肺がんの検査・診断の全体像については、肺がんの解説ページも参考にしてほしい。
(Medister編集部 2026年8月21日)
本記事は2026年8月21日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター「肺末梢病変の診断精度向上に向けたクライオ生検のランダム化比較試験結果を発表」(最終確認日: 2026年8月21日)
- Matsumoto Y, et al. The Lancet Respiratory Medicine. 2026; DOI: 10.1016/S2213-2600(26)00191-8(最終確認日: 2026年8月21日)


















