更新日:2026/08/20
未分化型の早期胃がん、ESD後10年の追跡データで外科手術に匹敵する生存率を確認
国立がん研究センターなどが参加するJCOG1009/1010試験グループは、未分化型早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の10年成績を、消化器分野の国際学術誌Gastroenterologyに発表した(2026年8月7日)。2011年〜2013年に346名が登録され(全適格例337名)、観察期間の中央値は約10.5年にわたる。10年にわたる追跡データで、外科手術に匹敵する生存成績が確認された。
発表のポイント
• 10年全生存割合96.2%、10年無再発生存割合95.7%(非ランダム化検証的前向きコホート・登録346名、全適格例337名)※1
• 治癒切除を達成した195名中、10年間に転移・再発が確認されたのは1名のみ※1
• 対象条件は「腫瘍径2cm以下・潰瘍なし・粘膜内(T1a)に限局・未分化型(低分化腺癌または印環細胞癌)」に限られる※1
概要
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、内視鏡を使って胃の粘膜を切り取る手技であり、胃を残したまま早期のがんを切除できる。分化型の早期胃がんへのESDは標準治療として定着しているが、未分化型(低分化腺癌・印環細胞癌)は転移リスクが相対的に高いとされ、従来は外科手術が原則とされてきた。
JCOG1009/1010試験は、その前提を検証するために設計された非ランダム化検証的前向きコホート試験である。2011年〜2013年に346名が登録され(全適格例337名)、観察期間の中央値は125.8か月(約10.5年)に及んだ。対象患者の条件は「腫瘍径2cm以下・潰瘍なし・粘膜内(T1a)に限局・未分化型」とすべてがそろった場合に限られている。
結果として、10年全生存割合は96.2%、10年無再発生存割合は95.7%だった※1。治癒切除が確認された195名のうち、10年間に転移・再発が判明したのは1名にとどまった。5年全生存割合は99.3%であり、5年を過ぎてからの再発がごく少なかったことも今回の長期追跡で明らかになった。研究グループはこれらの成績について、外科手術と同等の極めて良好な成績が維持されたと報告している※1。なお、ESD後は定期的な内視鏡観察が必要であり、新たながんが見つかった場合も多くの例でESDによる追加処置が可能とされている。
この記事の読者にとっての意味
今回の試験が対象とするのは、「未分化型・腫瘍径2cm以下・潰瘍なし・粘膜内(T1a)」という条件がすべてそろった早期胃がんの患者さんに限られる。いずれか一つでも条件が異なる場合、今回のデータはそのまま当てはまらない。
「未分化型と診断されると手術しかない」と思い込みやすい状況で、この試験は条件を満たした患者群では胃を残すESDでも10年後に96%超の生存割合が維持されることを、日本人の前向きデータで示した。10年という観察期間が重要なのは、5年を過ぎてからも再発がほとんど起きていないことを確かめられるからである。分化型早期胃がんに対しては内視鏡治療(ESD)が標準治療の一つとされているが、未分化型への適応については主治医が個別に判断する。「自分の腫瘍の大きさ・組織型・潰瘍の有無はどうか」「ESDの適応として検討できるか」「術後の経過観察の頻度や方法は何か」といった点を主治医に確認することが、次の一歩になりうる。がん医療を担う臨床試験・治験についての情報は、がん情報サービスなどで確認できる。
本記事は2026年8月21日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
(Medister編集部 2026年8月21日)
参考資料
- 国立がん研究センター「未分化型早期胃がんに対する内視鏡切除後の10年成績を国際誌に発表」(最終確認日: 2026年8月21日)
- JCOG1009/1010試験グループ. Gastroenterology. 2026. DOI: 10.1053/j.gastro.2026.06.028(最終確認日: 2026年8月21日)


















