更新日:2026/08/19
肺の末梢病変の診断精度が向上——クライオ生検の国際共同試験で有効性を確認
国立がん研究センターを中心とした研究グループは2026年8月17日、CTなどで発見された肺の末梢病変に対し、「クライオ生検」と呼ばれる組織採取法が従来の生検法より高い診断率をもたらすことを、国際共同ランダム化比較試験で証明したと発表した。同年7月30日付で医学誌「The Lancet Respiratory Medicine」に掲載された結果によると、組織診断率はクライオ生検群83.4%に対し従来法群74.9%で、統計的に有意な差が確認されている※1。
発表のポイント
• クライオ生検の組織診断率は83.4%で、従来法(74.9%)を有意に上回った(n=627、p=0.0023)※1
• 採取組織を使ったがん遺伝子パネル検査の解析成功率はクライオ生検97.6% vs 従来法90.2%※1
• 重度の出血や生命を脅かす合併症は両群とも報告されなかった※1
概要
肺の末梢(奥の端の方)にできた小さな病変は、気管支鏡を用いた従来の生検法では十分な組織が採取しにくく、確定診断が難しい場合があった。クライオ生検とは、先端を冷却した細いプローブ(クライオプローブ)を気管支鏡を通して病変に近づけ、組織を凍らせた状態で引き抜くことで検体を採取する手技のことだ。凍結によって組織が損傷しにくく、まとまった量の検体が得やすいとされる。
今回の試験は日本・韓国・台湾・マレーシアの4カ国6施設が参加した国際共同ランダム化比較試験で、患者627人(うち日本521人)をクライオ生検群と従来法群に無作為に割り付けて比較した。主要評価項目の組織診断率はクライオ生検群83.4%、従来法群74.9%で、統計的に有意な差が認められた※1。病変の辺縁までしか生検器具が到達できない辺縁症例(診断がより難しいとされる症例)でも、クライオ生検76.7% vs 従来法64.7%(p=0.0060)と差は広がった※1。
採取した組織でのがん遺伝子パネル検査の解析成功率もクライオ生検97.6% vs 従来法90.2%で、クライオ生検群で高かった※1。遺伝子パネル検査とは、腫瘍組織の遺伝子変異を一度に多数調べ、個々の患者さんに適した治療薬の選択につなげる検査のことだ(詳細はがん遺伝子パネル検査とはを参照)。
安全性については、重度の出血は両群とも1%未満で、生命を脅かす合併症や死亡は報告されなかった。一方で中等度の出血や気胸の頻度はクライオ生検群でやや高かったことも一次情報に記されており、実施にあたっては主治医とのリスク確認が前提となる※1。
この記事の読者にとっての意味
この研究が関係するのは、「画像検査で肺の末梢に影が見つかり、良性か悪性かを確定するための組織診断が必要な状況にある患者さん」だ。今回の成果は診断技術に関するものであり、治療法の変更を示すものではない。
クライオ生検が選択肢になるかどうかは、病変の位置・形状や施設の体制によって異なる。また日本での保険適用の状況は本記事執筆時点(2026年8月)では国立がん研究センターのプレスリリースに記載がなく確認できていない。担当医から「肺の末梢病変の組織を採る必要がある」と言われた際に、「クライオ生検という方法はこの病変に適していますか」と確認することが、選択肢を広げる手がかりになりうる。
診断精度の向上は、続く治療方針の決定にも影響する。採取した組織でのがん遺伝子パネル検査の成功率が高まることについて、国立がん研究センターはゲノム医療への貢献が期待されると述べている※1。肺がんの診断・治療については専門医への相談が基本となる。
(Medister編集部 2026年8月19日)
本記事は2026年8月19日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
参考資料
- 国立がん研究センター「従来の生検法では診断が難しい肺の末梢病変に対するクライオ生検の有効性を国際共同試験で証明」(最終確認日: 2026年8月19日)。原著論文: Matsumoto Y, et al. The Lancet Respiratory Medicine. 2026 Jul 30. DOI: 10.1016/S2213-2600(26)00191-8


















