更新日:2026/08/19
未分化型早期胃がん、ESDで胃温存の10年エビデンス|JCOG1009/1010最終解析
国立がん研究センターは2026年8月7日、「潰瘍を伴わない2cm以下の未分化型早期胃がん」を対象とした内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の10年経過観察結果を発表しました※1。前向き確認試験(JCOG1009/1010、登録346名)の最終解析で、ESD後に未分化型優位の早期胃がんと診断された275名の10年全生存割合は96.2%、10年無再発生存割合は95.7%という結果でした。ESD自体はすでに日本で保険適用されていますが、「未分化型は胃を切るのが原則」とされてきた従来の考え方に対し、一定の条件下で胃を温存できる可能性を10年間の長期前向きデータで示した点が、今回の報告の新しい知見です。
発表のポイント
• 前向き確認試験(非ランダム化、登録346名)の最終解析で、ESD後に未分化型優位と診断された275名の10年全生存割合は96.2%、10年無再発生存割合は95.7%(確認日: 2026年8月19日)※1
• 治癒切除後5年を超えてからの転移・再発は1名にとどまり、長期にわたる安全性が示された※1
• 異時性(別の時期に生じた)胃がんが見つかった13例のうち8例は再度ESDで治療でき、外科手術を避けられた。治癒切除と判定された195名でみた10年無再発・胃温存生存割合(RGFS)は68.6%だった※1
概要
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、開腹せずに内視鏡(カメラ)を胃の中に通し、粘膜の下の層を剥ぐように切除する治療法です。体への負担が小さく胃を丸ごと残せる点が特徴で、分化型の早期胃がんへの適用はすでに標準化されています。
一方、印環細胞がんや低分化腺がんといった「未分化型」の早期胃がんは、分化型よりもリンパ節転移のリスクがやや高いとされており、従来のガイドラインでは外科手術が原則とされてきました。ただし、「潰瘍がなく、腫瘍径が2cm以下で、胃の最も表面の層(粘膜層)にとどまるもの」については、一定の条件を満たす場合にESDが検討できると日本のガイドラインに定められており、今回の試験はその根拠を前向きに検証したものです。
試験デザインは非ランダム化の検証的試験で、2011年2月から2013年5月にかけて346名が登録されました※1。ESD後の病理検査で「治癒切除」と判定された患者さんは追加手術なしで経過観察に入り、最初の3年間は6か月ごと、4年目以降は年1回の検査が続けられました。最終解析対象は275名です。
今回の最終解析では、ESD後に未分化型優位の早期胃がんと診断された275名の10年全生存割合は96.2%、10年無再発生存割合は95.7%でした※1。このうち治癒切除と判定された195名は追加手術なしで経過観察に入りました。別の時期に新たな胃がんが出てきた(異時性胃がん)13例のうち8例は再度ESDで治療でき、外科手術を避けられました。この治癒切除195名でみた10年無再発・胃温存生存割合(RGFS=再発・追加の胃切除・死亡がなく胃を温存して生存した割合)は68.6%でした。研究グループは、未分化型早期胃がんのESD後10年全生存割合を世界で初めて前向きコホートで評価した報告と位置づけており、今後の国内外ガイドライン改訂の議論に影響するとみられます※1。成果は消化器病分野の国際誌「Gastroenterology」(2026年8月7日)に掲載されました※1。
この記事の読者にとっての意味
対象となるのは、内視鏡検査などで早期胃がんが見つかり、病理検査で印環細胞がんや低分化腺がんなどの「未分化型」と告げられた患者さんとご家族です。とくに腫瘍径が2cm以下で潰瘍がない場合は、この試験の登録条件と重なる可能性があります。
ESD自体はすでに日本で保険適用されており、今回の論文は新たな治療法の承認を告げるものではありません。「ガイドラインに盛り込まれている選択肢の長期安全性データが、10年間の前向き試験で確認された」という段階であり、すぐに治療方針が変わるわけではありません。
主治医に確認するとしたら、「自分の病変はJCOG1009/1010という試験の適応条件(2cm以下・潰瘍なし・粘膜内にとどまる未分化型)に当てはまるか」「ESDを選択した場合の治癒切除の見込みと、治癒切除と判定されなかった場合の次の手順はどうなるか」といった点が論点になります。診断・治療の判断はすべて主治医とのご相談によります。
胃がんの基礎情報や検査・病期については、胃がんのページで確認できます。がん医療における臨床試験の仕組みについては、がん医療を担う臨床試験・治験のページをご覧ください。
(Medister編集部 2026年8月19日)
本記事は2026年8月19日時点の公的機関の情報および診療ガイドラインをもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。個々の患者さんの診断・治療方針を示すものではありません。治療の選択にあたっては、必ず主治医にご相談ください。
記載の生存率は集団を対象とした統計値であり、個々の患者さんの見通しを示すものではありません。
参考資料
- 国立がん研究センター「未分化型早期胃がんに対する内視鏡治療(ESD)の有効性を10年間の長期にわたる経過観察で検証 ~未分化型も内視鏡治療で胃の温存が可能~」(最終確認日: 2026年8月19日)
阿部清一郎ら. Gastroenterology. 2026 Aug 7. DOI: 10.1053/j.gastro.2026.06.028


















