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更新日:2023/05/17

3 cm以下の早期肺がんに対して肺機能温存手術である区域切除の有用性を証明

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院が、中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)では、科学的証拠に基づいて患者に第一選択として推奨すべき治療である標準治療や診断方法等の最善の医療を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施している。

肺がんは日本および世界でも罹患数、死亡数が多いがんである。また治療が困難な難治がんのひとつであり、治療開発が盛んに行われている。近年、がん検診やCTの普及により、より早期に肺がんが発見される機会が増え、治癒を目指せる治療として外科治療の重要性が増してきている。3 cm以下の肺がんに対しては肺葉切除が標準治療として行われているが、平均余命の延長に伴い、肺がんを含む新たながんの罹患増加やがん罹患年齢の高齢化が進み、肺機能温存の重要性が認識されている。しかし、腫瘍が小さいもしくは早期の肺がんにおいて、肺をどの程度切除すればよいか、以前から議論が続いていた。

肺の外科手術における機能温存手術には、「区域切除」と「楔状切除」がある。これらが標準治療の肺葉切除に有効性や安全性が劣らなければ臓器を温存できることになる。肺の機能は有限であり、肺の切除範囲が大きいと術後の患者の日常生活動作に影響することが知られている。がんの根治性は極めて重要であるが、機能温存と両立させる過不足のない手術が強く求められていた。

JCOG の肺がん外科グループでは、全国43施設の協力を得て、胸部CT所見においてすりガラス影を主とする3 cm以下のステージI期肺がんに対する区域切除の有用性を検証する単群検証的試験を実施した。

本試験は胸部薄切CTにおいて、腫瘍の最大径が3 cm以下、かつすりガラス影を主とする(C/T比が0.5以下)肺がんを有する患者を対象に行った。年齢は20~79歳、全身状態のスコア(PS: Performance status)が0か1と良好であり、規定の採血データなどで臓器機能障害がなく、肺葉切除に耐え得るなどの適格規準を満たす患者から参加を得た。

2013年9月から2015年11月の期間に396人の患者が登録された。全患者登録終了後、5年後に主たる解析が行われた。区域切除が完遂された357人の患者の術後5年時点における無再発生存割合は98%で、上回るべき最低値として予め設定していた87%を有意に上回ったため、区域切除が同対象においても有効であると結論づけられた。

また、区域切除後の術後早期に発症する主な有害事象のうち、比較的重症なGrade (重症度評価)3~4の有害事象は、肺感染(1%)、肺瘻(1%)、胸水(<1%)と漿液腫(<1%)であった。呼吸機能も肺葉切除に比べて区域切除では術後1年後の肺活量(1秒量)の低下が有意に少なかったことが明らかになった。以上の結果から、区域切除の有効性と安全性が証明され、同対象においては肺葉切除に加えて区域切除が標準治療のひとつと位置付けられた。

本試験の結果を受け、エビデンスに基づいた外科治療の提供が可能となり、3 cm以下ですりガラス影を主とする肺がんに対しては、切除マージン(がんからの適切な距離)が確保できれば、区域切除を行うことが第一選択として推奨される。本試験の結果により、日本だけでなく世界的にも標準治療の肺葉切除に加えて区域切除が行われる機会が増え、肺がん患者により有用な手術が適用されることが期待される。また、JCOG肺がん外科グループではさらに肺がんの病態解明に努め、根治性が高く、機能温存の面からも優れた治療開発を進める方針である。 (Medister 2023年5月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 3 cm以下の早期肺がんに対して肺機能温存手術である区域切除の有用性を証明-The Lancet Respiratory Medicineに論文発表-

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