更新日:2023/05/08
国立がん研究センター東病院と朝日サージカルロボティクス株式会社が共同開発 新コンセプトの腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」医療機器承認
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院と朝日サージカルロボティクス株式会社が共同で開発した、腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」が2023年2月1日に日本で医療機器として承認された。国立がん研究センター発ベンチャーによる医療機器の承認取得は初めての成果である。
ANSURサージカルユニットは、現在世界的に市場を独占している手術支援ロボットとは異なる新しいコンセプトの手術支援ロボットである。腹腔鏡手術において、従来、執刀医の指示で鉗子を操作していた助手や内視鏡カメラを操作するスコピストに代わり、執刀医は自身の鉗子を持ちながら、ロボットが保持する鉗子・内視鏡カメラを操作することができる。通常2人の外科医が担う助手とスコピストの作業を1台のロボットが担うことで合理的な手術環境が整備され、外科医のワークライフバランスの改善・向上が期待される。また、執刀医は一人で鉗子・内視鏡カメラの両方を直感的に操作できるようになるため、自身が望む視野が得られ、適切な強度で臓器を引っ張ったり、患部を切除することができる。より効率的に手術を進めることで手術時間が短縮され、より患者の体への負担が少ない医療の提供が可能となる。
このロボットは、今後も増え続けることが想定される腹腔鏡手術に対して外科医の数が充足しないという重大な問題を解決し、医師の働き方改革の推進に貢献することになるであろう。さらに今後、国立がん研究センター東病院では「ANSURサージカルユニット」を用いた手術に関するエビデンスを構築し、本ロボットの普及とより良い医療の提供を目指していく方針である。
「外科医の発想が出発点となり、この手術支援ロボットは生まれました。このロボットが、多くの臨床現場で使われ、多くの患者さんを治すことに役立つことを希望します。またこのロボット開発において、今まで日本にあまりなじみになかった『ベンチャー起業』による開発形態を我々は選択しました。迅速な意思決定のもと、最小の人員で最大の効果を生むこのような開発形態は今後も日本の中でも広がっていくと思います。『自分のアイデアが形になり、医療を変える』、こんなワクワク感を次の開発者にも味わっていただきたいです。本開発に関わったすべての方々に心より感謝いたします」と、国立がん研究センター東病院大腸外科長・医療機器開発推進部門長・伊藤雅昭氏はコメントしている。
(Medister 2023年5月8日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 国立がん研究センター東病院と朝日サージカルロボティクス株式会社が共同開発 新コンセプトの腹腔鏡手術支援ロボット「ANSURサージカルユニット」医療機器承認