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更新日:2022/11/13

希少かつ難治がんの神経内分泌がん(NEC)で大規模臨床試験が実現 現在の化学療法が進行・再発例の標準治療として確立

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院が、中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)では、科学的証拠に基づいて患者に第一選択として推奨すべき治療である標準治療や診断方法等の最善の医療を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施している。

神経内分泌がんは、神経内分泌細胞に由来するがんで、膵臓や消化管、肺など全身のさまざまな部位から発生する。増殖速度が速く、早期に転移・再発を起こしやすい傾向があるため、有効な治療法の確立が強く望まれているが、希少であるため臨床試験の実施が難しいことなどからその実現には至っていなかった。

神経内分泌がんの治療は、腫瘍が局所に限局していて手術で完全に腫瘍を取り除くことが可能な場合は切除を検討するが、増殖速度が速いため切除が可能な場合は少なく、多くの場合は病状制御を目的とした化学療法が行われる。

神経内分泌がんに対する化学療法は、性質が比較的類似している小細胞肺がんの化学療法に準じて、エトポシド+シスプラチン療法(EP療法)またはイリノテカン+シスプラチン療法(IP療法)が国内外で広く用いられてきた。しかし、神経内分泌がんの治療として、EP療法とIP療法のどちらがより効果が望める治療かは判明しておらず、科学的根拠に基づき治療を選択するには、ランダム化第III相試験(登録された患者をランダムに各治療群に割り付け、治療成績を比較する検証的な研究)で確認をする必要があった。しかし、ランダム化第III相試験を行うには多くの患者に参加してもらう必要があり、希少がんである神経内分泌がんでは実施が困難と考えられ、世界中で今まで実施されたことは一度もなかった。

JCOGでは、神経内分泌がんが様々な臓器に発生し得るという特性に注目し、肝胆膵グループ、胃がんグループ、食道がんグループが合同で研究計画を立案し、神経内分泌がんに対するランダム化第III相試験を実現した。

神経内分泌がんの患者に対し、EP療法とIP療法のどちらがより延命効果が高いのかを検証する目的でランダム化第III相試験を実施した。本試験は組織学的に診断された、消化器原発の神経内分泌がんの患者を対象に行った。年齢は20から75歳、全身状態のスコア(Performance status)が0か1と良好、規定の採血データで臓器機能障害がないなどの適格規準を満たす患者から参加を得た。登録された患者は1:1にEP療法かIP療法に割り付けられ、どちらかの治療を施した。

神経内分泌がんは稀な腫瘍であるため、他の希少がんと同様、正確な病理診断が難しく、診断においては細胞増殖の指標、細胞形態、他のタイプの腫瘍の併存などの評価を行う必要がある。最終的に神経内分泌がんと診断されるか否かによって適する治療が異なるため、病理診断は非常に重要である。本試験では登録された患者の診断について消化器腫瘍を専門とする病理医による病理中央診断を行った。

本試験の結果、両治療法の効果に明らかな差はなくどちらの治療法も標準治療として勧められることが明らかとなった。

JCOGでは、今回確立した標準治療をもとに、さらなる治療成績向上を目指して、次なる治療開発を計画している。また、希少がんにもかかわらず、多くの患者から参加を得、大規模な臨床試験を実現し、治療効果を含む臨床情報が得られた。さらに病理中央診断による正確かつ詳細な病理情報が、治療効果などの臨床情報と紐づいたことで、今後附随研究などでさらなる病態解明とさらに有効な治療法の開発が期待される。
(Medister 2022年10月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 希少かつ難治がんの神経内分泌がん(NEC)で大規模臨床試験が実現 現在の化学療法が進行・再発例の標準治療として確立 今後さらに有効な治療法の開発が期待

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