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更新日:2022/11/11

2cm以上の早期大腸がんに対して内視鏡治療(ESD)が治療の第一選択となり得ることを前向きコホート研究で確認

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院とNTT東日本関東病院(病院長:大江隆史、東京都品川区)などの研究チームは、転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対し、内視鏡治療で電気メスを用い病変を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行った1,883人(1,965病変)の患者の5年の全生存率、疾患特異的生存率、腸管温存率などを国内20施設との前向きコホート研究で調査し、いずれも良好な治療結果が得られることを確認した。

ESDは、国立がん研究センターによる内視鏡用の高周波ナイフ(ITナイフ)の開発や手技の確立により開発された治療方法で、2006年4月に早期胃がんの内視鏡治療として保険適用された。その後、早期大腸がんでの応用も進み、2009年7月には先進医療で評価され、2012年4月には保険適用となり、全国に普及した。これまで、安全性や治療効果についての研究報告が積み上げられているが、より長期的かつ大規模な報告が待たれていた。また大腸がんは、日本では最も、また世界的にも頻度が高い一方で、早期治療による生存率が高いため、早期発見と、患者の負担が少ない治療が求められている。

本研究の短期観察では、病変を分割せず切除することで取り残しを回避する一括切除の割合と、有害事象の発生率を調査した。その結果、一括切除割合は97%で、病理学的に追加手術が必要ないと判断された(治癒切除)割合は91%であった。有害事象では、腸に穴が開く穿孔を2.9%、術後出血を2.6%に認めたが多くが腸管を切除せず保存的な加療での対処が可能であった。0.5%で穿孔・出血のために外科手術が必要となった。

長期観察では本研究の主目的である、5年の全生存率、疾患特異的生存率、腸管温存率を調査した。その結果、5年の全生存率は93.6%、疾患特異的生存率は99.6%、腸管温存率は88.6%で、治癒切除が得られた場合の腸管温存率は98%と非常に高い割合であった。また、治癒切除後の局所再発は0.5%(8例)で認めたが、全例で内視鏡による追加治療が可能であった。一方で、異時性大腸がんは1%(15例)で認められ、13例で手術が施行された。

本研究において、2cm以上の早期大腸がんに対しESDを行った場合、高い割合で治癒切除が可能であり、長期的にもその状態が維持されることが明らかとなった。また、安全性やQOLの観点からも優れていることが示された。また、大腸ESDで治癒切除が得られた場合は、局所再発だけでなく異時性大腸がんの発生に注意する必要が示唆され、術後の定期的な経過観察の必要性が明らかとなった。

本研究において、転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対し、ESDで治療を行った場合の長期的な安全性と治療効果が大規模なデータで初めて明らかになった。またその治療結果も良好であることが消化器分野で世界的に権威のある国際的学術誌で発表されたことで、今後、世界的にもESDが標準治療となり、世界でも患者数の多い大腸がんのさらなる生存率の向上と、術後の患者のQOLの維持に大きく貢献することが期待される。

現在、海外においてはESD の難易度の高さからEMRが標準治療として位置づけられているが、今後、ESD技術の習得がさらに進められると考えられ、当センターで開発したESD技術の世界的な普及にも積極的に貢献する方針である。また、本研究により2cm以上であっても転移リスクの少ない早期大腸がんであれば、再発リスクを抑えられ、術後のQOLも維持できるESDが治療の第一選択となることで、早期発見・治療のメリットがさらに増すことになる。日本においては、40歳以上での便潜血検査による毎年の大腸がん検診と、異常を認めた場合は内視鏡での精密検査が推奨されているので、積極的な受診が強く望まれる。また、QOLの高い治療を望む場合は、任意型検診としての大腸内視鏡検査も選択肢とし、不利益と利益を理解した上での受診も勧められる。
(Medister 2022年10月11日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 2cm以上の早期大腸がんに対して内視鏡治療(ESD)が治療の第一選択となり得ることを前向きコホート研究で確認 早期治療による術後QOLと生存率向上が期待

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