更新日:2022/10/21
国際がん研究機関と共同研究開始 生活習慣とがんサバイバーの生活の質や予後との関連を調査
国立研究開発法人国立がん研究センターは、世界保健機関(WHO)の附属機関でがん研究を担う国際がん研究機関(所長:Elisabete Weiderpass、リヨン(フランス)、International Agency for Research on Cancer、以下略称: IARC)と共同で、生活習慣とがんサバイバーの生活の質や予後との関連を調査し、がんサバイバーの生活の質の改善を目指す共同研究を開始する。
近年、がんの早期発見技術や治療法の開発により、がんサバイバーが増加している。診断されてから5年生存しているサバイバーがアジアで2000万人以上、日本には341万人いると推計されている。生活習慣とがんとの関連について、罹患リスクや予防との関連については多くの研究がなされてきたが、がんの診断後の健康状態や生活の質に、診断前の生活習慣や診断後の生活習慣の改善がどのように影響するかは、十分に研究されてこなかった。
北欧諸国などでは、多くのデータベースを連結し、こうしたアプローチが以前より実現しているが、日本をはじめ多くの諸外国では、各データベースの管轄省庁の違いや連結するための個人IDの不存在、個人情報保護への懸念などから、本格的な研究実施は困難である。しかしながら、社会の変革を待たず、現在利活用可能な情報を集め、前進するため本研究を実施する。
また国際機関との共同研究は、以前より試みられてきたが、学生やポスドクではないシニア研究者が、他国の研究機関に長期出向することは難しいなど人事交流の面で課題があり、解決策が検討されていた。
研究では、まず既存のコホート研究を活用し、がん診断、予後への生活習慣等の影響を分析し、がん診断前後の生活習慣の変化の調査をし、がん診断前後の生活習慣の変化と、がん診断後の生存期間の関連の検討をするなどして生活習慣とがん診断後の生存期間の関連検討をする。
さらに、100名前後のがんサバイバーの協力を得て、がん診断後の健康状態や生活の質を調査しする。
また、がんサバイバーの長期追跡プラットフォーム構築に向けて、協力を得るステークホルダー(医療機関など)や、利用できる公的統計の利用申請手順、データリンケージ手順などの整備、あるいはがんサバイバーの健康状態や生活の質を長期的にフォローアップする質問票や入力方法(形態端末やWEB等の活用を想定)の開発を行う事により、がんサバイバーの長期追跡プラットフォーム構築をする。
最終的には他国へのスキーム提供、がん以外の病気への応用も視野に進めるという。
(Medister 2022年9月20日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 国際がん研究機関と共同研究開始 生活習慣とがんサバイバーの生活の質や予後との関連を調査 科学的根拠を蓄積しがんサバイバーの生活の質の向上を目指す