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更新日:2022/05/13

子宮平滑筋肉腫の特徴として、細胞周期関連酵素の異常な活性化の同定

名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科学の梶山広明教授、吉田康将特任助教、同大学医学部附属病院産婦人科の横井暁病院助教、および国立がん研究センター研究所病態情報学ユニットの山本雄介ユニット長、国立がん研究センター中央病院婦人腫瘍科の加藤友康科長らの研究グループは、子宮平滑筋肉腫に対する網羅的な遺伝子発現解析を通して、新たな治療標的としてPLK1遺伝子とCHEK1遺伝子を同定した。

子宮平滑筋肉腫は、極めて予後不良な婦人科悪性腫瘍である。一般的に、手術による完全切除が行えたとしても、早期に再発を来すことが知られており、このような再発子宮平滑筋肉腫に対する有効な治療方法は確立していない。近年、子宮平滑筋肉腫を含む悪性軟部腫瘍に対して、複数の新規治療薬が臨床応用されたため、その治療効果が期待されている。しかし、子宮平滑筋肉腫に対するそれらの新規治療薬の効果は限定的なものであり、臨床試験の結果に基づくと、それらの新規治療薬を用いたとしても、進行・再発子宮肉腫に対する生存期間の中央値は、1-2年程度であると報告されている。従って、子宮平滑筋肉腫に対する新規治療薬は、今なお渇望されている。

本研究グループは、子宮平滑筋肉腫の患者組織を使用し、次世代シーケンスにより網羅的に遺伝子発現解析を行った。その結果、子宮平滑筋肉腫においては、良性腫瘍と比較すると、発現変動している遺伝子が512個見つかった。さらにその512個の遺伝子の機能を、IPAという解析ソフトを用いて解析すると、子宮平滑筋肉腫において細胞周期に関わる複数の酵素(PLK1、CHEK1、CDK1、AURKBなど)の活性化が、明らかになった。

また、この結果は、公共データベースに存在する子宮平滑筋肉腫のデータにおいても確認されたため、細胞周期関連酵素の異常な活性化は、子宮平滑筋肉腫の特徴であり、治療標的であると考えられた。そこで、子宮平滑筋肉腫の細胞株に対して、それらの酵素に対する複数の阻害剤の抗腫瘍効果を試したところ、PLK1とCHEK1に対する阻害剤(BI-2536、プレクサセルチブ)は、極めて低濃度でも高い抗腫瘍効果を有することが明らかになった。

これらの薬剤は、子宮平滑筋細胞の細胞周期を制止させ、細胞死へ誘導した。また、CHEK1阻害剤(プレクサセルチブ)は、シスプラチン・トラベクテジン等の殺細胞性の抗癌剤と相性が良く、相乗効果を認めた。さらに、動物実験において、BI-2536単剤療法、およびプレクサセルチブ+シスプラチン併用療法は、マウスの腫瘍増大を有意に抑制することが明らかになった。

本研究グループにより、子宮平滑筋肉腫に対して、PLK1阻害剤とCHEK1が有効であることが、動物実験を含む様々な実験により明らかにされた。これらの阻害剤は、他のがん種においては臨床試験が既に行われており、ヒトにおける安全性に関するデータも得られている。従って、子宮平滑筋肉腫に対しても早期に臨床試験を企画し、臨床的な効果の検証が期待される。
(Medister 2022年4月11日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 子宮平滑筋肉腫の特徴として、細胞周期関連酵素の異常な活性化の同定 ―新規治療薬としてPLK1およびCHEK1阻害剤の効果が期待―

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