更新日:2022/03/05
希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進する 中央病院「MASTER KEYプロジェクト」への患者登録数 固形がん2000例、血液がん200例を突破
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、2017年5月から開始した希少がんの産学共同プロジェクト「MASTER KEYプロジェクト(Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registrY Project)」において、希少がん患者の遺伝子情報と、治療の詳細・予後など臨床情報のデータベースを構築し、希少がんの研究や企業治験、医師主導治験に活用している。
今回、本データベースにおいて、固形がん患者の登録が2000例を突破し、さらに2018年10月から登録を開始している血液がん患者の登録も200例を超え、希少がんにおける世界最大の臨床情報データベースとなった。2021年10月からはアジア・太平洋地域の施設からの登録も開始しており、今度さらにデータベースの登録拡大とそれを基盤とする希少がんの治療開発の促進が期待される。
「MASTER KEYプロジェクト」では、国立がん研究センターが有する先端的な研究開発のノウハウと研究支援機能、製薬企業が有するシーズと開発戦略を融合させ、網羅的かつ効率的に希少がんの治療開発を進めるための産学共同の研究基盤の構築を目指しており、現在、12企業と国立がん研究センター中央病院を含めて国内6施設、アジア地域では5か国10施設が参加している。
参加企業は、「MASTER KEYプロジェクト」のプラットフォームを利用することで、開発戦略に応じたデータベースの活用、症例リクルートの促進、前臨床研究での国立がん研究センター研究所との協業など多くのメリットが得られる仕組みとなっており、現在 21件の治験(医師主導治験14、企業治験 7)が進んでいる。
希少がん患者の登録においては、2018年8月に国立がん研究センターと連携協定を締結している一般社団法人日本希少がん患者会ネットワークとの連携により、多くの患者から協力を得ることができた。
同ネットワークの理事長眞島喜幸氏は、「この度は、固形がんレジストリ2000例および血液がんレジストリ200例突破、おめでとうございます。希少がんは症例数が少ないことから医薬品開発がなかなか進まず、予後も悪く、患者と家族は長年苦しめられてきました。そこにMASTER KEY プロジェクトが救世主のように現れ、患者会として患者登録に協力させていただいてきましたが、この度、世界に類のない症例数を達成されたことに大きな喜びを感じるとともに、これからのますますの希少がん研究の前進、副試験・治験の増加、奏功する新薬の誕生、さらに世界に先駆けた新薬の承認に大いに期待するところでございます。本当におめでとうございます」と述べた。
今後も希少がんの患者により早く、より多くの新薬を届けることを目指し、アジア・太平洋地域に拡大した「MASTER KEY Asia」とともに、日本およびアジアにおける希少がんにおけるゲノム医療の推進、希少がんの新規治療開発の推進に取り組むという。
(Medister 2022年2月28日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進する 中央病院「MASTER KEYプロジェクト」への患者登録数 固形がん2000例、血液がん200例を突破