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更新日:2022/03/05

腎がんの「ゲノム医療」に貢献 日本人での原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴の大規模解析

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの関根悠哉大学院生リサーチ・アソシエイト、桃沢幸秀チームリーダー、東京大学医科学研究所人癌病因遺伝子分野の村上善則教授、秋田大学大学院医学系研究科の羽渕友則教授、京都大学大学院医学研究科の小川修教授(研究当時)、東京大学大学院新領域創成科学研究科の松田浩一教授、国立がん研究センター遺伝子診療部門の吉田輝彦部門長、佐々木研究所附属杏雲堂病院遺伝子診療科の菅野康吉科長らの共同研究グループは、腎がん患者と非がん患者対照群を用いた症例対照研究で世界最大規模となる7,000人以上のゲノムDNA解析を行い、日本人の遺伝性腎がんの原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴を明らかにした。

腎がんは世界のがん全体の約2%を占めており、泌尿器科悪性腫瘍においては前立腺がん、膀胱がんに次いで多く、日本では年間約3万人が発症している。腎がんの病理組織型は約4分の3を占める淡明細胞型腎細胞がんと非淡明細胞型腎細胞がんの二つに大きく分類される。腎がん患者のうち、約5%は遺伝性腎がんであるといわれている。ゲノム配列において、個人の間で一つの塩基の違いを「遺伝子バリアント」というが、その中でも遺伝性腎がんの発症病因であり、発症リスクを大きく上昇させる「病的バリアント」が遺伝性腎がんの発症原因と考えられている。

病的バリアントを同定する遺伝学的検査は、現在日本においても普及が進んでいる。この遺伝学的検査を行うことで、適切な治療方針の決定や、患者の近親者に対する早期のスクリーニング介入などが可能になる。例えば、乳がんや卵巣がんは、BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に病的バリアントを保有する患者に対してPARP阻害薬が治療の選択肢となることや、がん未発症の患者に対して乳房や卵巣の予防的切除が日本でも医療保険に適応されるなど、遺伝学的検査の重要性はますます高まっている。一方で、腎がんは複数の遺伝性腎がん症候群とその原因遺伝子が同定され、原因遺伝子に応じた病理組織型が存在することや予後不良の因子となることが明らかになっているが、これらの研究は主に海外の研究成果に基づくものであり、日本人での発症リスクや臨床的特徴に関する情報は限定的であった。また、腎がんとBRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子などの他のがんで関連が示されている遺伝性腫瘍関連遺伝子では、遺伝子毎のリスクの大きさや臨床的特徴を評価する研究は大規模に実施されていなかった。

そこで共同研究グループは、日本人の腎がんについて大規模な数のサンプルを使用し、日本人に特徴的な病的バリアントの存在や病的バリアント保有者に特徴的な臨床情報を調べた。

腎がん関連遺伝子を含む計40個の遺伝性腫瘍に関連する遺伝子について、バイオバンク・ジャパン、秋田大学、京都大学が収集した腎がん患者1,532人および対照群5,996人のDNAを理研で開発したゲノム解析手法を用いて解析し、118個の病的バリアントを同定した。腎がんの病理組織型の一つである淡明細胞型腎細胞がん患者では4.1%の患者が病的バリアントを保有しており、特にTP53遺伝子ががんの発症に強く関わり、東アジア人に特徴的な病的バリアントが特に影響を与えていることが分かった。また、非淡明細胞型腎細胞がん患者では5.6%の患者が病的バリアントを保有しており、特にBAP1遺伝子、FH遺伝子が発症に強く関わることや、若く発症する患者に病的バリアントが多い臨床的特徴も明らかになった。

今後、これらの情報は日本人集団における腎がんの遺伝学的検査や診療ガイドラインへ貢献し、腎がんのゲノム医療体制の構築に寄与するものと期待できる。
(Medister 2022年2月21日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 腎がんの「ゲノム医療」に貢献 日本人での原因遺伝子・発症リスク・臨床的特徴の大規模解析

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