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更新日:2022/02/15

血液がん治療薬をがん免疫療法薬として新たに展開 抗CCR4抗体(モガムリズマブ)を用いた新規免疫療法の可能性を示唆

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所と大阪大学、名古屋大学、愛知医科大学などの研究チームは、血液がんの治療に使用される分子標的薬の抗CCR4モノクローナル抗体(モガムリズマブ)を、固形がん患者に対しては規定の投与量より減らし適正化することで、新たな免疫療法(併用療法)として治療の奏効が期待できることを見出した。

本研究では、基礎研究の結果などから新たながん免疫療法の標的として注目されている制御性T細胞に着目した。制御性T細胞は免疫応答を抑える機能を持ち、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー疾患などの過剰な免疫応答を抑制しているが、がん細胞はこの制御性T細胞を活性化することで免疫応答を抑制し、免疫細胞からの攻撃を回避していると考えられている。実際、悪性黒色腫や肺がんなどの多くのがんで、制御性T細胞が活性化していることが分かっている。しかし、制御性T細胞は、過剰な免疫応答を抑制し、免疫系を安定させる(免疫恒常性を維持する)重要な細胞でもあるため、がんに対する免疫応答を高めるために、免疫抑制機能のみを選択的に制御する必要があり、開発を困難にしていた。

本研究チームは先行研究で、がん組織に存在する制御性T細胞にはCCR4が高発現しており、CCR4に対する抗CCR4モノクローナル抗体(モガムリズマブ)を投与することで、制御性T細胞を選択的に除去できる可能性を報告していたことから、進行・再発固形がんを対象にモガムリズマブの安全性、薬物動態、制御性T細胞の除去効果を検討する第I相臨床試験を実施し、免疫モニタリングを行い、治療効果との関連を調べた。

研究の結果、血液がんに使用されている投与量の抗CCR4モノクローナル抗体(モガムリズマブ)を固形がん患者に投与することにより、末梢血中の抗腫瘍効果を抑制する制御性T細胞を効率的に除去できることが分かったが、治療効果は限定的であった。モガムリズマブ投与により長期生存効果が得られた患者では、抗腫瘍免疫応答により腫瘍縮小をもたらすセントラルメモリーCD8陽性T細胞が多く存在していた。一方で、治療効果が得られなかった患者は、モガムリズマブの規定量(保険承認量と同等)の投与では制御性T細胞の除去と同時に、腫瘍縮小をもたらすセントラルメモリーCD8陽性T細胞も除去されていた。セントラルメモリーCD8陽性T細胞も制御性T細胞と同様に低いながらCCR4を発現していることを見出した。モガムリズマブの投与量を減らし適正化することで制御性T細胞を選択的に除去しながら、セントラルメモリーCD8陽性T細胞を温存し治療効果が得られる可能性が示唆された。

本研究成果により、がん免疫療法としてのモガムリズマブの至適投与量を慎重に検討することの重要性を提言することができた。引き続き、臨床応用に向けて固形がんに対する大規模臨床試験の実施を目指す。「分子標的薬」として実績のある薬剤を「がん免疫療法」として適切・安全に使用するための治療法の開発は喫緊の課題であり、社会的意義の大きな研究成果になると考えられる。
(Medister 2022年2月15日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 血液がん治療薬をがん免疫療法薬として新たに展開 抗CCR4抗体(モガムリズマブ)を用いた新規免疫療法の可能性を示唆

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