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更新日:2022/02/06

ゲント大学(ベルギー)と国立がん研究センターとの国際共同研究

ベルギーのゲント大学VIB-UGent Center for Inflammation Research構造生物学ユニットと国立がん研究センター研究所がんRNA研究ユニットを中心とした国際共同研究チームは、肺がんや血液がんなどの様々な疾患に関与する重要なタンパク質の構造を明らかにした。

細胞はその表面にあるアンテナ(受容体)を介して外界とコミュニケーションを取る。その受容体に対応したタンパク質(リガンド)がこれらの受容体に結合すると、細胞の内部に信号を伝えることができる。その信号は、細胞を増やす指示やタンパク質の産生を促す指示など様々である。しかし、その受容体やリガンドの結合に何らかの異常が起こると、伝わる信号にも異常を来たす。例えば、細胞を増やす信号が過剰になってできてしまうのが、がんだと考えられる。

人間の健康に重要な役割を果たしている受容体のグループの一つに、受容体チロシンキナーゼ(RTK)と呼ばれるものがある。このRTKは20のファミリーに分類され、約60種類の受容体が存在する。がんなどの様々な疾患においてRTKが重要な役割を果たしていることから、これまでにRTKについての多くの研究が進められてきた。しかし、RTKグループの1つであるALK受容体およびLTK受容体については、30年以上前から知られていたものの、受容体がリガンドとどのように結合し相互作用するかは不明なままであった。

ALK/LTK受容体の細胞外構成要素として、EGF-likeドメイン、TNF-likeドメイン、Glycine-richドメインという3つのパーツが共通して存在することが知られていたが、それぞれの構造は明らかにされていなかった。ALK受容体およびLTK受容体の構造を解析したところ、細胞の外に出ている部分のうち、TNF-likeドメインとGlycine-richドメインの詳細な形状が判明し、また驚くべきことにそれぞれのパーツは別々に存在するのではなく、双方が絡み合って存在し、大きな構造体を形成していることが分かった。

リガンドが受容体と結合した際にとる立体構造について解析を行い、2分子のALK受容体が1分子のリガンド(ALKAL2)を抱きかかえるように結合することを解明した。さらにこの結合には3箇所の結合面が重要であることも分かった。1個のリガンドが2箇所の結合面で2個の受容体と結合し、その結果として受容体同士に引き合う力が働き、3箇所目の結合面が形成される。実際に受容体とリガンドあるいは受容体どうしが引き合う力を弱めるような人工的な変異を加えると、細胞の増殖が抑えられることが明らかとなった。一方で、白血病などにみられるALK遺伝子の変異では、この結合面の部位の構造が変化することが予想され、遺伝子変異の結果、ALK受容体とリガンドの結合しやすさ(親和性)を増すことが示唆された。以上のことから、ALK受容体とリガンド、あるいはALK受容体同士のそれぞれの接触面における結合が、細胞のシグナル伝達・細胞増殖に重要であることが明らかになった。

今回得られた知見から、ALK/LTK受容体の構造理解がさらに深まり、また、詳細な構造解析から明らかとなった構成要素を標的にすることで、ALK/LTK受容体に関わるがんやその他の疾患に対する新しい治療法開発につながることが期待される。
(Medister 2022年1月3日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース ゲント大学(ベルギー)と国立がん研究センターとの国際共同研究 がん細胞の増殖に重要な役割を果たすALK受容体の構造を解明新しい治療法開発に期待

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