google+
はてなブックマーク
LINE
  • Medister
  • コラム
  • 書評
  • 医療系企業・特集
がん治療.com おすすめコンテンツ
心理状態の遷移
告知をされてから、がん患者の心理はどのように遷移するのか?
ストレス解消法
がん治療は大きなストレスとなりますが、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
医師との付き合い方
がん治療するうえで、医師と上手に付き合っていくには?
  • がん治療.com コンテンツ一覧
  • がん治療.com 用語集

更新日:2021/12/12

成人T細胞白血病リンパ腫の多段階発がん分子メカニズムを解明

国立研究開発法人国立がん研究センター研究所分子腫瘍学分野古屋淳史主任研究員、斎藤優樹任意研修生、慶應義塾大学医学部内科学教室(血液)片岡圭亮教授(国立がん研究センター分子腫瘍学分野分野長を兼任)らの研究グループは、宮崎大学医学部内科学講座血液・糖尿病・内分泌内科学分野下田和哉教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座 小川誠司教授らと共同で、最新技術である単一細胞マルチオミクス解析を用いて、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染を原因とする成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の多段階発がん分子機構を解明した。

成人T細胞白血病リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma, ATL)は造血器腫瘍(血液がん)のひとつで、HTLV-1感染を原因とするCD4陽性T細胞腫瘍として、日本での発症率が高い病気である。感染の主な経路は乳児期に母乳を介した母子感染で、近年では保健指導などの徹底によって無症候性キャリアの患者や、ATLを新規に発症する人数は減少傾向にある。しかしながら、現在でも年間700名ほどがATLに罹患し、造血幹細胞移植以外に治癒に至る治療法がないという予後不良の疾患である。

HTLV-1感染成立後にウイルス由来のタンパク質であるTaxなどによって、CD4陽性T細胞の不死化が引き起こされるが、主に免疫応答などによって最終的にATLの発症に至るのはHTLV-1感染キャリアの5%以下で、それも発症までに50年から70年程度と非常に長い年月を要す。このATL発症までの長い期間において、HTLV-1感染細胞はもちろん、それまでHTLV-1感染細胞を監視して増殖を抑え込んでいたリンパ球を中心とする免疫細胞にも変化が起きて、ひとつひとつの細胞の性質が不均一な状態が存在していることが想定されていた。しかし、これまでの研究技術では、さまざまな種類の細胞が混在した状態でしか網羅的遺伝子発現解析などを行うことができず、数百から数万個からなる不均一な細胞集団を平均した状態しか知ることができなかった。

本研究では、世界的にも最新の技術である単一細胞マルチオミクス解析を用いて、HTLV-1感染を原因とするATLの多段階発がん分子機構を解明した。HTLV-1感染細胞を単一細胞レベルで正確に同定し、HTLV-1感染細胞のクローン拡大およびATLへの進展に伴う細胞動態の変化を分子レベルで網羅的に明らかにした。その過程で、新たなHTLV-1感染関連分子やATL進展関連分子を複数同定し、新たな治療標的候補となりうることを実験的にも証明した。

HTLV-1感染やATL発症に伴う免疫微小環境の変化、そして腫瘍細胞の遺伝子異常による微小環境の変容などのさまざまな事象が、多くの機能解析実験と組み合わせることで紐解かれた。

これらの成果は、HTLV-1感染からATLへの進展に至るまでの非常に長い期間における多段階の発がん分子機構を網羅的に明らかにした初めての研究であり、新たに同定した感染や腫瘍化に関連する分子や、免疫環境動態の変化は診断のためのバイオマーカーや新しい治療標的にもなり得るため、難治性疾患であるATLの診療に役立つことが期待される。
(Medister 2021年11月1日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 成人T細胞白血病リンパ腫の多段階発がん分子メカニズムを解明 難治性疾患の新規治療標的候補を複数同定

ページの上部へ戻る

がんの種類アクセスランキング

ページの先頭へ

医療系企業・特集

戦国武将とがん

書評

がんの種類