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更新日:2021/12/11

卵巣がんの抗がん剤耐性機序に関与する分子を同定

新潟大学大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の榎本隆之教授、同大学医歯学総合病院総合周産期母子医療センターの山脇芳助教らの研究グループは、国立がん研究センター研究所がん分化制御解析分野の岡本康司分野長らとの共同研究により、卵巣がん患者腹水中のがん細胞から作成した3 次元培養細胞(スフェロイド細胞)を用いた新たな解析手法を駆使し、再発卵巣がんで問題となるプラチナ製剤に対する耐性化の機序に関与する分子を同定した。

卵巣がんを中心とした女性特有のがんは増加傾向にあり、我が国での卵巣がんの死亡数は増加の一途をたどっている。卵巣がんはプラチナ製剤を中心とする抗がん剤治療に対して高い効果を示すものの、多くの症例でその後に再発を認め、とくにプラチナ製剤に対して耐性を示した場合には「プラチナ抵抗性再発」として有効な治療に乏しいのが現状である。プラチナ製剤に対する耐性機序の解明と、新たな治療戦略の構築は喫緊の課題であると言える。

本研究グループはこれまでに、卵巣がん患者より提供を受けた腹水中のがん細胞を用いて、3 次元培養細胞の一種である卵巣がんスフェロイド細胞を作成し、解析をすすめてきた。卵巣がんスフェロイド細胞は培養液中で球状の3 次元構造を保って増殖をし、生体内に近い状態を保持していると考えられる。今回の研究では、新たに10 種類の卵巣がんスフェロイド細胞の樹立に成功し、それらの網羅的な遺伝子発現解析と抗がん剤感受性試験を併用することで、卵巣がんの抗がん剤耐性機序に関与する分子の同定を行った。

樹立した卵巣がんスフェロイド細胞を用い、多種類の抗がん剤に対する感受性試験を行ったところ、プラチナ製剤への感受性が細胞によって異なることが分かった。そこで、プラチナ製剤に対して耐性が強い細胞群と耐性が弱い細胞群に分類し、それぞれの群の遺伝子の発現を比較検討したところ、プラチナ製剤に耐性がある細胞群では、ペントースリン酸経路の律速酵素であるグルコース-6-リン酸脱⽔素酵素(G6PD)と、それに関与する一群の酸化還元酵素の発現が高く、それらの分子がプラチナ製剤への耐性機序に関与していることが明らかになった。本研究では特にG6PD に着目し、スフェロイド細胞の増殖抑制実験や腹膜播種モデルを用いたマウス実験において、G6PD の阻害剤とプラチナ製剤の一種である抗がん剤シスプラチンを併用投与することで、スフェロイド細胞のもつプラチナ製剤への耐性が解除されることを見出した。

さらに、過去に新潟大学医歯学総合病院で手術を受けた卵巣がん患者のがん組織中のG6PDの発現を確認したところ、G6PD の発現の強さと患者の予後(無増悪生存期間、全生存期間)に逆相関がみられた。

プラチナ製剤に対して耐性が生じた卵巣がん患者にはプラチナ製剤とG6PD の阻害剤を併用することにより、プラチナ製剤の効果を回復させることができる可能性がある。また、患者由来のがんスフェロイド細胞の作成をすすめ、本研究で用いた解析手法を用いることで、他の薬剤での耐性機序に関与する分子も同定することができると考えられる。
(Medister 2021年10月18日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 卵巣がんの抗がん剤耐性機序に関与する分子を同定 卵巣がん患者由来の3 次元培養細胞を用いた新たな解析手法に基づく成果

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