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更新日:2021/11/06

HOXA9がMYCと協調して白血病を引き起こすメカニズムを解明

公益財団法人庄内地域産業振興センター(理事長:皆川治、鶴岡市末広町)/国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点がんメタボロミクス研究室の横山明彦チームリーダーの研究グループは、悪性度が高い白血病で強く発現しているMYCとHOXA9の働きを解析し、HOXA9が「細胞の生存能力を高める遺伝子」の発現を高い状態で維持することで、白血病化を促進している事を明らかにした。がん細胞はMYCタンパク質を大量に産生する事で、細胞の代謝を増殖に適した状態に変化させる。一方でMYCによって引き起こされる過剰な増殖は細胞を死にやすくするため、MYCが働くだけでは白血病には至らない。そこで、MYCと協調的に働き白血病化を促進する「がん化の協調因子」を探索した結果、HOXA9が複数の生存促進遺伝子を活性化する事で、細胞の増殖能力と生存能力を高めている事を見出した。

急性白血病は、MLLなどの遺伝子発現を調節するタンパク質が、遺伝子変異の結果、異常に強く働く事で、血液細胞の無制限な増殖を誘発し発症する。MLL遺伝子に変異を持つ白血病は骨髄性とリンパ性両方の急性白血病の5~10%で見られる。MLL変異を持つタイプの白血病の生存率は約40%と極めて低く、新しい治療法の開発が強く望まれている。MLL変異体はこれまでにHOXA9遺伝子やMYC遺伝子を活性化する事で白血病を引き起こしていると考えられてきたが、これらの「MLLによって制御される遺伝子」がどのようなメカニズムで白血病を引き起こしているのかは不明だった。マウスを用いた動物実験では、HOXA9、MYC単独では白血病を引き起こさないが、HOXA9とMYC両方を発現させると白血病を引き起こすことが分かった。この結果は、HOXA9とMYCが何らかの協調作用を介してがん化を促進している事を示唆した。そこでこれらのタンパク質の機能を調べたところ、MYCは、細胞が増殖する上で必要な代謝プログラムを駆動している一方で、過剰な増殖が細胞を疲弊させ、死にやすい状態にしていることが分かった。一方でHOXA9は本来であれば分化の進行に伴って発現低下するようにプログラムされている「細胞の生存を助け、死ににくくする遺伝子」の活性化状態を維持する事によって、MYCによる細胞増殖の促進をアシストしていることが分かった。本来血球細胞は必要に応じて素早く増殖する能力を持っているが、その一つの理由は、HOXA9によって「血球細胞の生存を助ける遺伝子」が活性化されているためであるようだ。本研究によって、HOXA9は本来血球細胞に特徴的に発現している「細胞の生存を助ける遺伝子」の発現を異常に長く維持する事で白血病細胞の増殖を促進することが分かった。

本結果はHOXA9による遺伝子発現維持が白血病発症に重要な役割を果たしている事を示しており、この事は即ちHOXA9の働きを阻害する物質を作ることができれば、それが新たな白血病治療薬となる事を示唆している。今後さらにHOXA9の分子機能を明らかにすることでHOXA9に対する創薬開発を行い、新たな治療法の開発に取り組む方針である。
(Medister 2021年10月4日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース HOXA9がMYCと協調して白血病を引き起こすメカニズムを解明

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