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更新日:2021/04/30

近赤外光を利用したハイパースペクトル画像から粘膜下腫瘍(GIST)を識別

東京理科大学生命医科学研究所の高松利寛助教(東京理科大学・国立がん研究センタークロスアポイントメント)、同大学基礎工学部材料工学科の曽我公平教授、同大学理工学部機械工学科の竹村裕教授、国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科の佐藤大幹氏、池松弘朗医長、故金子和弘氏、同病院遺伝子診療部門長(当時病理・臨床検査科長)の桑田健氏、理化学研究所光量子工学研究センターの横田秀夫チームリーダーらの研究グループは、近赤外光を利用したハイパースペクトル画像から消化管間質腫瘍(GIST)を識別する方法を開発した。

GISTは、消化管壁の粘膜下に生じる腫瘍で、胃と小腸によく発生する。痛みや消化管出血、腸閉塞などの初期症状がある場合もあるが、多くは無症状で、内視鏡検査などの消化管の検査で発見される。胃GISTの場合、まず内視鏡検査で粘膜下腫瘍(SMT)として検出される。SMTは粘膜下にあるため、直接観察のみからGISTかどうか診断することはできない。病変の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査(生体組織診断)を行なっても、多くの病変は粘膜深部に位置するため、正しく診断される確率は低いという問題がある。超音波で病変の位置を確認しながら針を刺して組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引法 (EUS-FNA)」は有効な生検方法であるが、技術の習得が必要である。さらに、確定診断のためには、得られた組織サンプルのどこに抗原物質が発現しているかを、抗原抗体反応を利用して調べる「免疫組織化学法」を行う必要があるが、これは非常に時間と手間がかかる。そこで研究グループは、粘膜下の深部にあるSMTの診断に有望な技術として、近赤外光を利用したハイパースペクトル画像に着目した。

ハイパースペクトルイメージング(HSI)は、蛍光プローブを使用せずに高解像度の分光スペクトル情報を得ることができる撮影装置で、上皮性腫瘍や胃がんの診断など、さまざまな研究領域で応用されている。機械学習アルゴリズムを使用したHSIでは、画像データの各ピクセルの分光スペクトル情報を取得するだけでなく、大量のハイパースペクトル画像から重要なデータを抽出することもできる。しかしながら、GISTのように組織の深部に生じる病変の識別技術はまだあまり進歩しておらず、事例すらない。そこで研究グループは、近赤外光を利用したHSIからGISTを診断する技術を考案し、組織の深部に生じる病変の識別技術としてふさわしいかどうか検証した。

41歳から81歳のGIST患者12名(男性10名、女性2名)から切除した病変を対象に研究を行った。患者の年齢の中央値は68歳、腫瘍サイズの中央値は41mmであった。切除された12の試料のうち、7個は病変が完全に粘膜によって覆われており、3個は部分的に粘膜に覆われていた。また、7個の試料ではGIST病変だけでなく正常部位も含まれていた。

採取した試料に粘膜側から近赤外光を照射し、HSI画像を得た。試料は全て事前に正常部位と病変部位が識別されており、それぞれの部位から得られた画像を機械学習の訓練データとして用いた。この機械学習モデルの識別能力を評価するために、一個抜き交差検証を行った。一個抜き交差検証は、まず訓練データの中から評価データとなる試料を選び、選んだデータを除いた訓練データで学習して最後に評価データを識別できるか評価する。

その結果、近赤外光を利用したHSI画像に基づく機械学習で予測されたGIST領域は、事前に病理学者が識別した領域とよく一致していた。機械学習アルゴリズムの評価指標である特異度、感度、正解率はそれぞれ73.0%、91.3%、86.1%と、高い値を示した。これは、今回用いた方法でGISTと正常組織の違いを識別できることを示唆する結果である。

今回の研究から、近赤外光を利用したハイパースペクトル画像からGISTを識別できることが示された。研究グループは、この技術の臨床応用を見据え、ハイパースペクトル画像を形成する波長を選定する特許を既に共同出願し、体内で近赤外ハイパースペクトル画像が撮影可能な装置を開発している。今後さらなる研究の発展によって、粘膜深部に浸潤した腫瘍の範囲診断や腹腔鏡による腫瘍の識別が可能になり、早期発見、手術時の正確な範囲診断により切除部位の最小化することで機能を損なわないように手術できるようになり、術後のQOLの向上につながると期待される。今回の研究成果を診断機器として製品化することにより、GISTの早期診断を通じて社会に貢献できる企業を募集している。
(Medister 2021年4月12日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センタープレスリリース 近赤外光を利用したハイパースペクトル画像から粘膜下腫瘍(GIST)を識別 ~GISTの早期発見、切除部位の最小化につながる画像識別手法の開発に成功~

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