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更新日:2020/09/07

“光生検”切らずにその場でがんをすぐ診断―イメージングで組織を傷つけずに立体観察、AIが自動診断―

大阪大学大学院医学系研究科の石井優教授(免疫細胞生物学)、松井崇浩助教(病態病理学)、木村正教授(産科学婦人科学)、九州大学大学院医学研究院の加藤聖子教授(婦人科学産科学)、株式会社ニコンの清田泰次郎氏らの研究グループは、子宮頸部を生きた組織のまま、ホルマリン固定や染色を行わずに、リアルタイムに3次元で観察できる方法を開発した。

がんの最終診断には、病気が疑われる部位から組織片を切り取って(=いわゆる「生検」や「手術」)、ガラス標本を作製し、病理医が顕微鏡で観察・診断する“病理診断”が不可欠である。しかしこの方法は、採取する組織片の量によって、診断の精度が左右される。採取量が少ないと診断が確定できないことがある一方で、採取量を多くすると患者への負担(=「侵襲」という)が大きくなり、稀ではあるものの合併症を生じうることが課題である。また子宮頸がんの場合、患者が同時に妊娠していることもあるが、妊娠中に子宮頸部の組織を採取することは、リスクが高いと考えられている。さらに従来の病理診断では、採取した組織片からガラス標本を作製するまでに、ホルマリン固定や染色など多くの処理工程が必要なため、患者が検査を受けてから診断できるまでに、時間がかかることも課題となっている。

本研究グループは、最新の生体可視化ツールである多光子励起顕微鏡を用いて、ヒトの組織の観察を行った。これは、近赤外線により生じる組織深部の蛍光を検知し、組織を傷つけることなく、深い部位まで可視化できる技術である。本研究グループはこの技術を応用し、組織の切り取りや、ホルマリン固定や染色などの処理を一切行わずに、生きた状態の子宮頸部組織を3次元で観察できる方法を開発した。具体的には、超短パルスレーザーを用いて近赤外線を組織に当て、非線形光学現象による蛍光シグナルを利用して可視化するものである。この方法を用いると、組織を切り取ったり染色試薬を用いたりしなくても、“細胞の核”と“細胞周囲の線維”を詳細に描出することができた。従来の病理診断と比べて、低侵襲で(=体の負担が少なく)、しかもリアルタイムに組織画像を得られるのが、この方法の大きな特徴である。さらに、この画像をAIで解析することで、子宮頸部の正常組織、上皮内がん(非浸潤がん)、浸潤がんの画像を、定量的に分類できることも分かった。

今回用いたイメージング技術を、医療機器へ応用することで、従来の方法よりも低侵襲・迅速・定量的ながん組織診断の実現が期待される。早期がんの診断や治療後の効果判定も非侵襲的に行えることが期待される。また、デジタル画像データが迅速に入手できるため、AIを介した診断にも適している。さらには、海外でも、発展途上国など病理医を含む医療専門職が少ない地域にもIoTを介した組織診断を提供でき、全世界の人々を対象に、がん診断を展開できると考えられる。
(Medister 2020年9月7日 中立元樹)

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構プレスリリース “光生検”切らずにその場でがんをすぐ診断―イメージングで組織を傷つけずに立体観察、AIが自動診断―

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