更新日:2018/11/17
SDTM規格に対応した薬事承認申請用プロトコルテンプレートを開発
国立研究開発法人国立がん研究センター東病院は、CDISC標準に対応した、臨床試験データセット標準規格(Study Data Tabulation Model:SDTM)である薬事承認申請用のプロトコルテンプレートを開発した。また、本テンプレートから承認申請に必要なデータを抽出し、SDTM規格データとしてマイクロソフト社のMicrosoft Excelへ移行するツールも作成した。
2020年4月から独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)へ提出する薬事承認申請データにSDTM(Study Data Tabulation Model)規格で作成された臨床試験の電子データを含めることが義務化される。薬事承認申請データを提出する際、プロトコルに記載された内容との整合性確認は目視で行っており、多くのリソースがかかっている。そのため、効率的かつ信頼性の高い変換ツールの研究開発が世界中で行われている。なお、海外では既にFDA(アメリカ食品医薬品局)がSDTM規格を導入しているという。
今回開発したプロトコルテンプレートは、世界的な標準開発機関であるCDISC標準の観点からレビューし、SDTMドメイン、変数、Controlled Terminologyを、Microsoft Wordの機能であるコンテンツ コントロールのプロパティを用いて、タグ情報として追加したものである。プロトコルの記載事項に入力することにより、SDTM規格データに無変換で移行できるため、相互にデータの共有が可能となり、高効率で信頼性が高く、SDTM規格で重要な原データからSDTMに変換されるまでの過程を追跡できるデータを作成することができる。また、このテンプレートは統一規格のため、薬事承認申請に至らない臨床試験のデータも他施設や企業とデータシェアリングがスムーズに行えるようになる。規格が統一されることにより、現在使用されている薬剤との比較が容易になる。
SDTM規格データとプロトコルとの整合性確認の効率化の課題は、多くの個人開発者や製薬企業、CRO(Contract Research Organization 医薬品開発受託機関)、ITベンダー企業等で開発されているが、個人や企業内のみでの共有に留まっているのが現状である。本プロトコルテンプレートおよびツールは、オープンソースソフトウェアとして広く公開することにより、様々な視点から改良が加えられより自由度の高いツールになっていくことを目的としており、年内の公開を予定しているという。なお、本プロトコルテンプレートはMicrosoft Wordのフォーマットで作成されており、SDTM規格データとして出力される際はMicrosoft Excelのフォーマットになるため、オペレーティングシステム(OS)に依存する設計となっている。CDISCではプロトコルなどのドキュメントもオープンソースであるXMLフォーマット等の汎用性が高い形式で作成することを推進しているため、今後はそれらに対応した改良が成されることで、CDISCが掲げる「CDISC標準実装メリット」である、効率化、イノベーションの強化、データシェアリングの円滑化、予測の向上、完全なるトレーサビリティ、データ品質の向上、コスト削減、合理化されたプロセスの一翼を担うことができるようになる。
国立がん研究センターでは、2018年中にSDTM形式に対応したプロトコルの使用を開始するため、現在進行中の治験のデータベースを調整し、今後新たに開始される治験はこのテンプレートを使用する方針である。
(Medister 2018年11月12日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 申請資料作成における業務の標準化、作業効率化を図り、データシェアリングが容易に SDTM規格に対応した薬事承認申請用プロトコルテンプレートを開発