更新日:2017/11/13
がん診療に携わる医師の緩和ケア知識・困難感を調査
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターを中心とする厚生労働科学研究費補助金「がん対策における緩和ケアの評価に関する研究」研究班は、政府が2007年に策定したがん対策推進基本計画の中で掲げられた「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により、緩和ケアについての基本的な知識を習得する」という目標に基づいて、全国434(2017年4月時点)のがん診療連携拠点病院等で医師を対象に実施されてきた緩和ケア研修会の効果を調査し、明らかにした。
この調査では、2008年と2015年に、わが国の医師を対象に2つの全国調査を行い、医師の緩和ケアの理念や疼痛管理に関する知識と、症状緩和や専門家の支援などで感じる困難感の変化を検証した。研究の結果、7年間で医師全体の知識スコアは14%増加、困難感スコアは6%減少していた。2015年の調査対象者のうち、国が推進し、既に10万人以上の医師が終了している緩和ケア研修会を修了した医師と未修了の医師について、緩和ケアに関する知識と困難感の違いを検証した結果、未修了医師に比べ、修了医師では知識スコアが平均16%高い一方、困難感スコアは平均10%低く、緩和ケア研修会の効果が明らかになっていた。
ここでいう緩和ケア研修会とは、厚生労働省が開催指針を定め、全国のがん診療連携拠点病院等が、日本緩和医療学会が作成した研修プログラム(「症状の評価とマネジメントを中心とした緩和ケアのための医師の継続教育プログラム(PEACE プロジェクト)」)を参考として開催しているものであり、2008年の開始からこれまでに10万人以上の医師(2017年7月末時点)が修了している。
本研究結果から、2007年度に始まったがん対策推進基本計画に基づき推進されてきた緩和ケアの施策により、緩和ケアを提供するがん診療に携わる医師に効果が生じていることが確認された。今後は、緩和ケアの実際の提供状況、緩和ケアを受ける患者や家族の療養状況への効果を明らかにしていくことが期待されるであろう。本研究結果は米国学術雑誌「Cancer」での掲載に先駆けオンライン版で公開された。
(Medister 2017年11月13日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター がん診療に携わる医師の緩和ケア知識・困難感を調査 7年で知識スコア14%増、困難感スコア6%減 緩和ケア研修会の効果も明らかに