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更新日:2017/01/16

内視鏡治療後の再度の胃がん発生リスク診断法を開発

国立研究開発法人国立がん研究センターは、胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常の程度を測定することにより、早期胃がんを内視鏡で治療した後に再び別の胃がんが発生するリスクを予測する新たな診断法の開発に成功した。

DNAメチル化(メチル化)は、遺伝子を使用するかしないかの目印として細胞が利用している情報である。その異常(DNAメチル化異常、または、メチル化異常)には、遺伝子暗号が変化していないにもかかわらず遺伝子を使えなくなる効果があることが知られている。メチル化異常は生涯残るために、突然変異と同様にがんの原因になるといわれている。

研究グループは、ピロリ菌感染歴のある早期胃がんの内視鏡治療後の胃がん患者826名を対象に、除菌後、胃の中の一定の場所から採取した胃粘膜(がんではない正常な胃粘膜)について、3つの遺伝子のメチル化異常の程度を測定した。その後、毎年1回の内視鏡検査により平均5年の経過観察を行い、別の新たな胃がん(異時性多発胃がん)が出来るかどうかを調べた。826人の参加者の中で経過観察を行えた795名のうち、異時性多発胃がんが133名に発生した。確実に最初に内視鏡で治療した胃がんとは別の胃がんであると考えられる胃がんに限っても116人に発生していた。3つの遺伝子(miR-124a-3、EMX1、NKX6-1)のうちのどれか一つのメチル化異常の程度により患者を4段階に分けて、胃がんの発生しやすさを比べた。その結果、miR-124a-3遺伝子においてメチル化異常の程度が最も高かったグループの人は、最も低かったグループの人と比べて3倍胃がんになりやすいことが分った。

本研究成果により、遺伝子のメチル化異常の程度を測ることで、発がんリスクの診断が可能であることが示された。現在、臨床実用化を目指して、ピロリ菌除菌後健康人を対象に、メチル化異常の程度を測定し胃発がんリスクを予測する多施設共同前向き臨床研究を全国66施設の参加で行っている。このリスク診断が実用化されれば、検査結果(発がんリスクの程度)に応じて検診の頻度を変えるなど、検診者の負担軽減、ひいては医療費の削減が期待できるであろう。また、メチル化異常は慢性炎症に起因する他のがんにおいてもその原因として重要であることが知られている。従って、本研究と同様のリスク診断の手法が、肝炎ウイルスや脂肪肝を背景とした肝臓がん、潰瘍性大腸炎由来の大腸がんなどにも応用できることも期待できるであろう。
(Medister 2017年1月16日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 内視鏡治療後の再度の胃がん発生リスク診断法を開発 ピロリ菌除菌後の健康人で実用化、早期発見・早期治療を目指す

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