更新日:2020/12/22
大腸がん形成に関するメカニズムを解明か

この研究では、大腸の炎症に伴って大腸がんを発症するマウスモデルを用いて、PGの経路と大腸での炎症との関与の仕方、PG経路によりがんの発生・進展を引き起こすメカニズムについての検討を行った。
まず、PGE2受容体の1つであるEP2を、炎症性大腸がんの形成関連因子として同定した。次に、がん組織内のEP2発現細胞についての検討を行い、大腸がんを発生・進展させるメカニズムに、EP2やPGE2-EP2経路が関係していることを見出した。また、ヒトの潰瘍性大腸炎由来大腸がん病理組織標本において、EP2が腫瘍に関連した細胞で発現していることを確認した。つまり、モデルマウスでの結果は、ヒトの病態へ応用できる可能性を示したことになる。さらに、モデルマウスへの選択的EP2阻害薬の投与により、用量依存的に大腸での炎症・がん形成を抑制していることを突き止めた。
これらの結果により、大腸がん発生・進展を促進する大腸での炎症反応は、PGE2-EP2経路により制御されており、EP2を阻害することが大腸がんの治療戦略になりえる、ということが明らかとなった。
これまでの研究で、大腸がんの発生・進展には炎症が関係していること、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の服用が大腸がん発症リスクを軽減させることが知られていた。今回の研究により、大腸がんの発生・進展を安全に抑制する薬物の開発に繋がると期待されている。
(Medister 2015年6月23日 葛西みゆき)
<参考資料>
科学技術振興機構(JST) 大腸がん形成を促進する炎症因子としてプロスタグランジンE2-EP2受容体経路を発見 -EP2を標的とした大腸がんの予防・進展抑制薬の開発に期待-

大腸癌治療ガイドライン 医師用 2014年版