更新日:2020/12/22
癌患者の様々な「つらさ」に対する、トータル的なサポートが始まる

このプロジェクトの背景には、2014年7月に塩野義製薬が抗癌剤治療中の患者293名を対象に行ったアンケート調査の結果がある。それによると、患者の5~7割が身体的辛さを、6割が精神的辛さや社会的辛さを経験している。一方、それを周りに伝えているかという点では、身体的な辛さを「我慢せずに伝えた」と回答したのはおよそ6割だったが、精神的な辛さはおよそ3割、社会的な辛さは2割未満にとどまり、「つらさを我慢している」という現状が明らかになったという。
具体的な取り組みとしては、塩野義製薬の東京支店に「がん疼痛克服推進室・疼痛治療推進グループ」を創設し、癌患者が周りの人々に「癌によるつらさ」を伝えるアプリほか、啓発資材の開発などを通して様々な「つらさ」を周りの人と共有できるようにする。さらに、同グループ内に新たに創設する専門チーム・SWATによる疼痛治療の推進や、映像コンテストの実施などを計画している。
現在の緩和ケアは「癌と診断された時から、身体的・精神的・社会的なつらさなどに対し、トータル的に行われるもの」とされている。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が発行する「ホスピス緩和ケア白書2013」によると、緩和ケア病床はこの20年で30倍以上に増えた。2012年には、およそ3,000名の医師が緩和ケアの研修を受け、緩和ケアに携わる専門・認定看護師は2,000名を突破した。いずれもここ数年で非常に伸びている。
それでもつらさを我慢する患者が非常に多いという現実がある。この取り組みが癌患者にどのような光明をもたらすのか、注目していきたい。
(Medister 2015年3月25日 葛西みゆき)

がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版