2014年3月19日から21日まで英国グラスゴーで開催された第9回European Breast Cancer Conference(EBCC2014)において、オランダのLeiden University Medical CenterのG.J.Liefers氏により、「上限を75歳まで引き上げた乳癌スクリーニングは進行乳癌を減らすことには貢献せず、早期乳癌の発見を多くする可能性がある」との研究についての発表が行われた。1998年よりオランダでは乳癌スクリーニングプログラムの上限が、69歳から75歳に引き上げられた。しかし70歳以上の人にとって、この引き上げがどれほどの効果があるかについては、検証されていなかった。
Liefers氏は「早期乳癌に対する手術は一般的に低リスクと考えられるが、術後合併症の発生率は高齢者で強く増加する。また、高齢者にはホルモン療法や化学療法といった術後補助療法の副作用のリスクがある。スクリーニングの年齢引き上げは過剰治療やQOLの低下につながっている可能性がある」と述べている。Liefers氏らの研究グループが、1995年から2011年の間に浸潤乳癌、粘膜内乳癌と診断された70歳から75歳の患者(診断時に70歳から75歳だった2万5414人のデータ)について調べた結果、早期乳癌の患者数は、1995年の260人から2011年には382人(いずれも10万人あたり)となった。一方で、進行乳癌(3期、4期)の患者数はほとんど差がなかったためだ。
では、日本の現状はどうだろうか。日本での乳癌スクリーニングは、触診・超音波・マンモグラフィが主流だ。特に年齢は特に決められていないが、厚生労働省では乳癌検診無料クーポンを40歳から60歳まで5年間隔で配布することとしている。さらに2012年には「乳がん発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングガイドライン」が公表されているが、ここでも年齢の上限は明記されていない。超高齢化社会である日本において、乳がんスクリーニング検査は何歳までが現実的なのか。今後の動向にも注目したい。
(Medister 2014年3月26日 葛西みゆき)
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