更新日:2017/05/14
患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド
「痛みがあれば何でも言ってほしい」。本書が呼びかけたいことを一言で表すなら、このことに尽きます。がんの痛みにはどのようなものがあり、なぜ起きるのかという辞書的な内容にとどまらず、患者さんが医師にどのように痛みを伝えればいいのか、治療がうまくいかないと思うときにどうすればいいのかなど、痛みの治療で多くの患者さんが不安に思うことを広くカバーしています。
痛みを我慢する必要はない、むしろ治療すべき
がんと診断されたとき、多くの人が不安に思うことのひとつに「痛み」があります。がんが内臓や骨、神経などを刺激することで、痛みを感じます。他にも、手術後の慢性痛や、抗がん剤による口内炎など、治療に伴う痛みもあります。
世界保健機関(WHO)による『がんの痛みからの解放—WHO方式がん疼痛治療法』(金原出版)では、痛みどめ(鎮痛剤)を適切に用いることで、がんの痛みの80パーセント以上はやわらげることができるとあり、「がん患者は痛みで苦しめられる」時代は過去のものになりつつあります。
それでもなお、多くのがん患者は痛みに対する不安をもっており、実際に痛みに苦しんでいる患者さんもいることでしょう。これは、痛みは我慢するものであり、痛みを訴えるとがん治療が中止されるかもしれない、と考えているからかもしれません。あるいは、痛みどめは抗がん剤の効果を弱くする、または中毒性があるから最後の手段にしか使いたくない、と思われるかもしれません。
本書では「これらはみな誤解や迷信であって、痛みの治療を受けることをためらう必要はないのです」と明記しています。むしろ、痛みをしっかりと医師に訴え、がんだけでなく痛みも治療することを推奨しています。
その根拠として、米国の総合病院で行われた研究成果がコラムとして紹介されています。転移のある進行性肺がんの患者さんに緩和ケア(心身の痛みをやわらげる療法)を実施することで、生活のしやすさが改善し、不安なども解消され、さらには生存期間も延びるというものです。細かい部分においてはさらなる検証が必要ですが、痛みの治療が医師の間でも注目されていることには違いありません。
どうやって痛みを伝えればいいのか
ところが医師にとって、痛みを治療するときには大きな課題があります。それは「痛みは患者さん本人にしかわからない」ということです。痛みは、画像や血液成分から判断でいません。つまり痛みの治療は、患者さん本人が伝えるところから始まります。
本書では、痛みを伝えるためのコツなどが多く書かれています。診察のときに言い出しにくいのであれば、あらかじめメモ用紙にまとめておいて医師に渡す、家族や友人に同席してもらって話しやすい雰囲気を作ってもらう、などの例を挙げています。このあたりは、書名に「家族のための」という言葉が含まれている理由にもなっています。患者さんに接する時間が最も多い家族だからこそ、痛みを訴えやすい相手なのです。
また、痛みをどう言葉で表現したらいいのかわからない、という患者さんもいるでしょう。その点においても具体例として「ズキンズキンと脈打つ痛み」「締め付けられるような痛み」「さわると痛い」「ギクッっと走るような痛み」などが書かれているので、実際に痛みを伝えるときにも役立ちます。
痛みの治療がうまくいかないときや、新しい痛みが出てきたときにどうすればいいか、という不安についても、本書は取り上げています。個々の事例については本書をご覧いただきたいのですが、最初に述べたように「痛みがあれば何でも言ってほしい」というキーワードにつながります。
本書は一問一答形式で、1つの質問について1〜4ページで解答しているので、気になるところから読み始めても問題ない構成になっています。また薬の名前から検索できるよう索引があるので、治療を受ける前だけでなく治療中にも活用できる一冊です。
痛みは患者さん本人にしかわからないからこそ、医師は患者さんの言葉を待っているのです。痛みがやわらぐことで、がん治療にも前向きになれます。本書を読んで、痛みがあるときには臆することなく積極的に訴えるようにしましょう。
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