皮膚がんとは|検査や治療、ステージなど

悪性黒色腫

悪性黒色腫とは

悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、皮膚の色と関係するメラニンをつくるメラノサイト(色素細胞)や、ほくろの細胞(母斑細胞)ががん化してできる。男性では60歳代、女性では70歳代で最も多く発生するが、30歳~50歳代の若中年層で発生することも少なくない。発生部位として最も多いのは足の裏だが、胴体や顔、爪などさまざまな部位に発生することもある。

悪性黒色腫が発生する原因については、まだよくわかっていないが、白色人種に多く発症することから、紫外線に関係しているといわれている。また足の裏や爪など、いつも刺激を受けている場所にできやすいことから、外からの刺激も関係していると考えられる。悪性黒色腫の臨床症状は、大きく4つのグループ(病型)に分けられる。しかし、明確に分類できない場合もある。

(1)表在拡大型黒色腫
多くの場合、ほくろの細胞から発生することが多いと考えられ、全身のどこにでもできる。白人に多い病型ですが、近年、日本人にも増加している。わずかに盛り上がったシミが見られ、境界も不整で、色調は濃淡のまざったまだら状。40歳~50歳に多く、腫瘍(がん)の成長は比較的ゆるやか。

(2)悪性黒子型黒色腫
高齢者に多く、顔面や首、手背などにでき、境界が不整で色調もまだらな黒褐色の平らな色素斑が出てくる。ゆっくり成長し、治癒する確率は高いと言われている。

(3)末端黒子型黒色腫
日本人に最も多い病型で、主に足の裏や手のひら、手足の爪に発生する。はじめのうちは褐色・黒褐色のシミができ、色調が一部濃くなったりまだらになったりする。進行すると隆起や潰瘍ができることもある。爪に黒い縦のすじができ、爪全体に広がり割れることがある。60歳代以降に多くみられ、かなり進行してから気づかれることが少なくない。最近はダーモスコピーという診断法で早期病変の状態で発見することも珍しくない。

(4)結節型黒色腫
はじめから急速に成長することが多く、全身のどこにでも発生する。結節(硬いしこり)状の小腫瘤から発生し、色調は全体的に濃黒色や濃淡がまざるようになる。40歳~50歳代に多くみられる。腫瘍(がん)の成長が速い黒色腫。

悪性黒色腫は、がんの前駆症状ないし早期段階の症状があり、その検出に下記に示すABCDEの5つの特徴が役立つといわれている。この5つのポイントを示す場合、悪性黒色腫の可能性が高くなる。このほか、主な特徴として、①大きさの変化、②色の変化、③形の変化、その他の特徴として④炎症性潰瘍、⑤出血あるいはかさぶた状、⑥感覚の変化、⑦病変の長径が6㎜より大きい、といった点が悪性黒色腫を早期に検出するのに役立つ。普段、気をつけて観察し、気になったときは早めに受診することが、早期発見につながる。

~悪性黒色腫の早期の症状~
A:Asymmetry 形が左右非対称である
B:Border of irregularities 辺縁がギザギザして不整である。色のにじみ出しがある。
C:Color variegation 色調が均一でない。色むらがある。
D:Diameter greater than 6㎜ 長径が6㎜以上である
E:Enlargement or evolution of color change,shape,or symptoms 大きさの拡大、色や形、症状の変化

悪性黒色腫の症状

皮膚は体の表面をおおっている臓器ですから、内臓にできる「がん」とは違い、自分または家族などが見て「おかしい」ことに気付くことができるがんの一つです。しかし、悪性黒色腫は「メラノサイト」と呼ばれる色素をつくる細胞や、ほくろを作り出す細胞(母斑細胞)が、何らかのきっかけで悪性化したものです。そのまま進行すると悪性黒色腫になりますが、その一歩手前の状態、いわゆる「悪性黒色腫前駆症」とよばれる時期があります。この前駆症のとき、あるいは悪性黒色腫でもごく早期の段階で「おかしい」と気付くことができれば、早期診断、早期治療につながります。

悪性黒色腫の早期には、前述の通りA・B・C・D・Eと、大きく5つ方面から見ていくことができます。例えば、「ほくろ」とおもわれる部分の皮膚表面の形が左右非対称であったり皮膚と「ほくろ」の境界が不明瞭であったり、「ほくろ」全体の色むらがあるような場合は、普通の「ほくろ」ではないことを知っておきましょう。また、他の「ほくろ」よりも明らかに大きなものや、徐々に大きくなる、色や形の変化に気づいた場合も同様です。こういった変化がみられる場合、悪性黒色腫の初期であることが疑われます。

また、このほかにも、およそ1~2年くらいの短期間で、次のような変化がみられる場合も注意が必要です。

1. 大きさが変化する:例えば、直径2~3㎜程度の「ほくろ」が、1~2年程度の間に5㎜を超える大きさまで変化するとき。変化のスピードが短いほど要注意。
2. 形が変化する:「ほくろ」の辺縁にギザギザな部分、一部がしみ出したような形が生じるとき。辺縁の変化が大きいほど注意が必要。
3. 色が変化する:「ほくろ」は一般的に薄めの褐色をしているが、これが「濃い黒」に変化するとき。あるい「ほくろ」の中に色の濃い部分と薄い部分が混在したり、一部の色が抜け落ちているとき。
4. 硬さが変化する:「ほくろ」の一部に、硬い部分ができたとき。あるいは、他の「ほくろ」よりも全体的に硬くなったとき。
5. 爪が変化する:爪に黒い褐色の縦向きのすじ(色素線条)ができたとき。悪性黒色腫の場合は、1年以内にこの「すじ」の色合いが濃くなったり、「すじ」の幅が拡大する。さらに進行すると、爪が割れ、色素がしみ出して見えるようになる。

悪性黒色腫は、初期の段階では「ほくろ」との見分けがつきにくく、早期発見・早期治療につながりにくいという現実があります。こういった症状が見られる場合は、自己判断せず、皮膚科専門医を受診しましょう。


悪性黒色腫の原因

悪性黒色腫の原因には、大きく二つの要因があるとされています。一つは「環境因子」、もう一つは「遺伝的な背景」です。どちらか一つの要因が直接の原因となるのではなく、双方の要因が重要な役割を果たすと考えられています。
悪性黒色腫は、日本人などのアジア人を含む「有色人種」よりも、欧州や北米などの白色人種での発生率が、数倍高いことが分かっています。さらに、年間を通して紫外線が多い地域に住む白色人種では、さらに発生率が高くなるといわれています。つまり「紫外線」が関係している可能性があるのです。
一方の日本人の場合は、悪性黒色腫の多くが、紫外線が直接当たらず、その影響を受けにくい部位に発生しています。また、UVカット効果のある乳液やクリームなど、いわゆる「サンスクリーン剤」を使用することにより、紫外線を直接浴びていても、悪性黒色腫の発生率は少なくなる傾向にあるといわれています。日本人の場合でも、過度な日焼けは避けた方が、悪性黒色腫の発生が抑えられる可能性があります。

また、遺伝的な背景としては、白色人種での例があります。家族内で複数の人が悪性黒色腫を発症したり、数か所に多発する家系があるようです。これらの家系では、遺伝的な要素が強く関係していると考えられています。
日本人の場合は、こういった遺伝的な背景のある家系は、明らかになっていません。しかしながら、日本人の発症例では、衣服などによる「こすれ」がある部位や傷のある部位、あるいは足の裏や爪などの常に刺激を受けるような部位に発生することが多く、外部からの物理的な刺激も、悪性黒色腫の発生を促す要因と考えられています。

悪性黒色腫の検査と診断

悪性黒色腫は、皮膚科専門医による臨床症状の総合的な診断が必要である。見ただけでは診断が難しい場合には、患部から組織を採って顕微鏡で調べる病理検査が行われているが、悪性黒色腫に直接メスを入れる皮膚生検は、かつて転移を促す可能性があるとされていたことから、現在でも積極的には行われていない。臨床症状から診断するのが難しい場合は、腫瘍全体を切除する全切除生検を行う。そのほかにも血液検査で腫瘍マーカーの値を参考にすることもある。しかし腫瘍マーカーはかなり進行した段階で上昇するものなので、早期診断に有用とはいえない。リンパ節や内臓などへの転移を調べるために、X線、超音波(エコー)、CT、MRI、PETなどの画像診断を行うこともある。

超音波(エコー検査)
体に超音波をあてて、その反響で体内の状態を調べる方法。原発巣(最初に発生したがん)の進行度の重要な指標である厚さを予測したり、リンパ節などへの転移の検索に役立つ。
CT、MRI検査
CTは、X線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺のがんの広がりを調べる。MRIは磁気を使用する。造影剤を使用する場合、アレルギーが起こることがある。ヨードアレルギーの経験のある人は医師に申し出る必要がある。
PET
放射性ブドウ糖液を注射し、その取り込みの分布を撮影することで、全身のがん細胞を検出する検査。

悪性黒色腫の病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいう。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることも多い。病期には、ローマ数字が使われ、悪性黒色腫では、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期に分類されている。がんの厚さ、リンパ節への転移や他の臓器への転移があるかどうかによって病期がほぼ決まる。診断された病期によって治療方法が決まっている。



悪性黒色腫のステージ

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいう。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることも多い。病期には、ローマ数字が使われ、悪性黒色腫では、がんの進行度により、0期、Ⅰ期(A、B)、Ⅱ期(A、B、C)、Ⅲ期、Ⅳ期に分かれます。それぞれ、次のような特徴があります。ポイントは、リンパ節への転移があるかどうか、がんの厚さはどうか(基準は1mm、2mm、4mm)、潰瘍があるかどうか、他の臓器(皮膚以外の部位や臓器、皮下など)への転移があるかどうか、です。診断された病期によって治療方法が決まります。

  • 0期:がんが、上皮内にとどまっている状態
  • Ⅰ期:他の部位やリンパ節への転移が無い
    • A:がんの厚さが1㎜以下で、潰瘍が無い
    • B:がんの厚さが1㎜以下でも潰瘍がある、あるいはがんの厚さが1~2mmで潰瘍が無い
  • Ⅱ期:他の部位やリンパ節への転移が無い
    • A:がんの厚さが1~2mmで潰瘍がある、あるいはがんの厚さが2~4mmで潰瘍が無い
    • B:がんの厚さが2~4mmで潰瘍がある、あるいはがんの厚さが4mmを超えるが潰瘍が無い
    • C:がんの厚さが4mmを超えて潰瘍がある
  • Ⅲ期:他の部位やリンパ節への転移があるが、他の臓器への転移は無い
  • Ⅳ期:他の臓器への転移がある

治療法

手術(外科療法)

<特徴>

がん病巣を手術で除去する療法で、原発巣だけでなく、他の部位に転移した転移巣も取り除きます。がんそのものを外科手術で除去する局所療法です。がんの治療法として最も基本的な治療法です。

悪性黒色腫の手術では、見えているがんの部分(原発巣という)だけではなく、その辺縁からおよそ1~2㎝はなれた部分で切除します。切除する深さについては、進行度(ステージ)によって変わります。がんの部分だけを切除しても、その周囲に再びがんが発生する(再発する)可能性があるためです。

しかし、切除した部分が悪性であるかどうかの判断がつきにくい場合には、見えているがんの部分(黒色に変化している部分)だけを切除し、病理医による病理診断が必要となる場合があります。また、切除した範囲が大きく、皮膚を縫い合わせられない場合は、別の部位から適切なサイズの皮膚を移植することがあります。

さらに手術のとき、センチネルリンパ節※1を切除し、がんの転移を確認し、場合によってはリンパ節郭清(切除部位に関係するリンパ節を取り除くこと)を行うことがあります。リンパ節郭清後は、手足のむくみやしびれなどが起こることがありますので、対処法については医師や看護師に相談しましょう。

※1 センチネルリンパ節:センチネル=見張り番 という意味をもつリンパ節で、がんのある部位から近い位置に存在し、最初にリンパ節転移が起こるとされるリンパ節のこと。
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抗がん剤(化学療法)

<特徴>

化学物質(抗がん剤)を利用してがん細胞の増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療法です。全身のがん細胞を攻撃・破壊し、体のどこにがん細胞があっても攻撃することができる全身療法です。
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免疫細胞療法

<特徴>

身体の免疫を担う本人の細胞を体外で大量に数を増やし、機能を増強あるいは付加した上で体内に戻して行われる治療法です。上記の三大治療法に対して、近年注目されてきている、副作用がほとんど確認されていない先進的ながん治療法で、目に見えないがんや転移防止に有効な全身療法です。
がんに対する抗がん剤などの積極的な治療は行わず、症状などを和らげる治療に徹する
ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)の選択肢の一つです。
免疫療法は副作用が少ないため、症状の緩和やQOLを高めることにつながります。
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放射線療法

<特徴>

腫瘍の成長を遅らせるために、あるいは縮小させるために放射線を使用する治療法です。がんに侵された臓器の機能と形態の温存が出来ますまた、がんの局所療法であるため、全身的な影響が少なく、高齢者にも適応できる患者にやさしいがん治療法です。
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陽子線治療

<特徴>

通常のX線の放射線治療ではがん局部の周囲の正常な細胞も傷つけてしまいますが、陽子線治療はがん局部だけを照射して周囲の正常な 細胞が傷つくことをより抑えることができます。また、痛みもほとんどなく、1日15~30分程度のため、身体への負担が少ない治療です。1日1回、週 3~5回行い、合計4~40回程度繰り返します。
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重粒子線治療

<特徴>

陽子線治療と比べて、さらにがん局部を集中的に治療が可能となります。がん細胞の殺傷効果は陽子線治療の2~3倍大きくなります。 進行したがんは低酸素領域がありますが、このようながんでも治療が可能です。また、X線では治療が難しい深部にあるがんの治療も可能です。治療は1日1 回、週3~5回行い、合計1~40回程度繰り返します。平均では3週間程度の治療になります。1回当たり、15?30分の治療時間になります。
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免疫チェックポイント阻害薬

<特徴>

悪性黒色腫の薬物による治療法の一つとして、「免疫チェックポイント阻害薬」による治療があります。これは、体の中にもともとある「免疫細胞」を活性化させることで、がん細胞が免疫機能からの攻撃を避けようと「免疫細胞にかけたブレーキ」を外すという効果が期待できるお薬です。手術適応にならないケースや、悪性黒色腫の再発ケースに対して適応となることがあります。実際に使用するお薬はいくつかの種類がありますが、およそ10~40%程度のケースで、がんが小さくなるなどの効果があるといわれています。しかし、治療後数週間~数か月後に、皮膚障害、神経や筋肉の障害、肺炎、肝臓障害、下痢などの下部消化管での障害などがみられることがあります。治療後にどのような症状に気を付ければ良いのか、予め医師や看護師からの指導を受けておきましょう。

再発と転移

悪性黒色腫の治療後は、再発や転移がないかを調べるために、定期的な受診と観察が必要です。
● 再発:治療した悪性黒色腫の近くあるいは離れた皮膚に、再びがんが発生すること
● 転移:がん細胞がリンパの流れにのって皮膚ではない別の臓器へ移動し、そこでがんが発生すること

再発と転移は、同時に見つかることがあります。悪性黒色腫の場合、再発については自分で見つけることが出来るという特徴があります。皮膚の色の変化、皮膚のもりあがりやひきつりなど、いつもとは違う皮膚の状態に気づいたら、すぐに皮膚科専門医を受診しましょう。
「ほくろ」と思われても、あえて刺激するのではなく、刺激を与えないように心がけましょう。特に成人後にできた「ほくろ」が、色が濃くなって目立つようになったり、大きさが変化するような場合は、早めに皮膚科専門医を受診し、必要な検査を受けましょう。

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