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更新日:2021/05/23

卵巣がんとは|症状や検査、治療、ステージなど

卵巣がんについて、特徴・分類・症状・原因・検診・検査方法・病期(ステージ)・生存率・治療法・再発・転移など様々な観点から解説します。

男女ともに、がんでの死亡率はおおよそ60歳から増加し、高齢になるにつれ高くなっていきます。卵巣がんだけを見てみると、2017年に亡くなった人は4,745人で、年齢別でみてみると20歳代では13人、30歳代では76人、40歳代では408人、50歳代では731人、60歳代では1,125人、70歳代では1,005人、80歳代以上では1,385人となっています。

女性の場合、40歳代では乳がんや、子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)、卵巣がんが死亡の多くを占めますが、高齢になるほどこの割合は減少傾向に向かい、胃がん、大腸がん、肝臓がんといった消化器系のがんと肺がんの割合が増加します(以上、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より)。

卵巣がんとは

卵巣がんは、子宮の両脇にある卵巣で発生するがんです。卵巣がんは、その発生する場所によって上皮性・胚細胞性・性索間質性などの種類がありますが、90%以上が上皮性のがんです。また、悪性度が比較的低く、境界悪性腫瘍と呼ばれる卵巣がんも存在します。

上皮:卵巣をおおう細胞の層
胚細胞:卵子のもとになる細胞
性索間質:ホルモンを産生する細胞と周囲の組織

卵巣がんはがんができてもはじめはほとんど症状を自覚することがないです。下腹部にしこりを触れる、圧迫感がある、膀胱が圧迫されて尿が近くなるなどの症状があって受診することが多いですが、このようなときはがんが進んでいる可能性があります。卵巣がんは発育すると転移します。がんが大きくなる前に転移することもあります。転移とは、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って他の場所に移動し、そこで増殖することをいいます。卵巣がんの場合、腹腔内(おなかの中)の臓器にがん細胞が広がった播種という転移が中心となります。おなかの中にがんが広がることで、おなかに水が溜まって腹部全体が張ってくる、胸にまでがんが広がることで胸に水がたまって息切れするといった症状が出てはじめて異常に気づくことも少なくないがんです。

卵巣がんにかかる人の数は40歳代から増加して、50歳代~60歳代がピークです。卵巣がんで遺伝的関与があるのは5~10%ですが、近親者に卵巣がんにかかった人がいる場合は、いない場合に比べて発症の確率が高くなるといわれています。

卵巣がんは症状を自覚しにくいがんなので、受診が遅れがちです。早期発見の有効な方法はまだないですが、腹部の違和感があった場合は早めに産婦人科を受診することが大切です。

女性の卵巣がん死亡者数

卵巣がんの症状

卵巣は、骨盤内にある臓器であるため、初期症状がほとんどないです。自覚症状が出るのが遅く、ある程度進行してから診断されるということが多くなります。

そんな中でも、自覚症状として比較的多く見受けられるのが、腹部の張り(腹部膨満感)で、肥満でないあるいは妊娠もしていないのにお腹が張って膨らんでくる、あるいは自分で下腹部を触った時にしこりに触れる、というものです。

他にも下腹部痛、頻尿、胃腸障害、体重減少が見られます、これらの症状は腫瘍がある程度大きくならないと、出現しません。

また、これらの症状は卵巣がん以外でもみられる症状であるため、これらの症状が出現したからと言って、卵巣がんの症状に直接結びつけることは難しいとされています。

さらに腫瘍が大きくなると、腫瘍の破裂や、腫瘍がお腹の中でねじれる(茎捻転)を起こす可能性もあります。

卵巣がんの原因

卵巣がんの原因には複数の要因が絡み合っているとされています。まず考えられる要因は、以下のようなものです。
・妊娠、出産経験が少ない
・排卵誘発剤の使用
・10年以上にわたるホルモン補充療法
・多のう胞(たのうほう)性卵巣症候群

排卵は、卵巣がんを誘発する原因の一つと考えられています。排卵によって卵巣の細胞が傷つけられることにより、がん化している可能性があるとされています。

そのため、妊娠、出産の経験が少なく、排卵回数が妊娠や出産を経験している人よりも多い人、排卵誘発剤により通常よりも多く排卵をしている人、多のう胞性卵巣症候群によって卵巣から多くの卵が排卵されている人、初経が早く閉経が遅い人などは、卵巣がんになりやすいとされています。また、子宮内膜症や、骨盤内炎症性疾患など、卵巣、子宮および付属器に対して、何らかのダメージを受けるような既往がある人も、卵巣がんを発症しやすい要因を持ち合わせていると考えられています。

それ以外の要因としては、日常生活に関するものが考えられます。例えば、肥満、特に、動物性食品の多量摂取を好むような食習慣、喫煙習慣などです。

<遺伝>

この他にも、卵巣がんには遺伝が関係している可能性も指摘されています。遺伝による卵巣がんに罹患するリスクは、およそ5~10%程度とされていますが、近親者に卵巣がんになった人がいる場合は、いない人に比べて発症の確率が高くなる可能性があるといわれています。

卵巣がんの検査と診断

卵巣がんが疑われた場合、がんの可能性が高いかどうか、がんである場合はどの程度広がっているかを調べるための検査として、内診、直腸診、超音波検査、CT、MRIなどがあります。卵巣がんは、良性の卵巣腫瘍と鑑別が難しく、手術して組織を顕微鏡で調べる病理検査をすることで診断が確定されます。

内診・直腸診
子宮や卵巣の状態を膣から指を入れて調べます。また、直腸やその周囲に異常がないかをお尻から指を入れて調べます。
超音波(エコー)検査
超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。痛みもなく、放射線の被曝もないです。膣の中から超音波をあてて調べる場合もあります。卵巣腫瘍の性状をみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係や他の臓器やリンパ節への転移の有無を調べます。
CT、MRI検査
CTは、Ⅹ線を使って体の内部(横断面)を描き出し、治療の前にがんの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます。MRIは磁気を使った検査である。CTやMRIで造影剤を使用する場合、アレルギーが起こることがあるので、以前に造影剤のアレルギーの経験のある人は医師に申し出る必要があります。
腫瘍マーカー(血液検査)
腫瘍マーカーとは、体のどこかにがんが潜んでいると異常値を示す血液検査項目です。卵巣がんの場合、がんの可能性の評価や転移・再発の評価指標として、また治療の効果判定などのためにも用いられています。卵巣がんではCA125と呼ばれるマーカーが代表的です。しかし、卵巣がんであっても腫瘍マーカーに異常が認められない場合もあります。また、治療効果や転移、再発の評価には腫瘍マーカーの推移が重要です。
腫瘍マーカーについてもっと詳しく見る

卵巣がんの病期(ステージ)

病期とは、がんの進行の程度を示す言葉で、英語をそのまま用いてステージともいいます。説明などでは、「ステージ」という言葉が使われることが多いです。病期には、ローマ数字が使われます。卵巣がんでは、両側の卵巣に病気が及んでいるか、腹腔内(おなかの中)にがんが散らばっているか、およびリンパ節転移や他の遠隔臓器への転移の有無によってⅠ期(Ⅰa、Ⅰb、Ⅰc)、Ⅱ期(Ⅱa、Ⅱb、Ⅱc)、Ⅲ期(Ⅲa、Ⅲb、Ⅲc)、Ⅳ期に分類されています。卵巣がんの病期は、手術の結果、がんがどの程度広がっていたかが判明した時点で決まります。

~卵巣がんの病期~
Ⅰ期 がんが片側あるいは両側の卵巣にだけとどまっている状態
Ⅰa期
がんが片側の卵巣だけにある
Ⅰb期
がんが両側の卵巣にある
Ⅰc期
がんが片側または両側の卵巣にある場合で、がんにより被膜(外層)が破裂している場合、腹腔から採取した液体または腹膜を洗った洗浄液からがんが見つかった場合
Ⅱ期 がんが卵巣の周囲、つまり卵管、子宮、直腸、膀胱などの腹膜に進展している状態
Ⅱa期
がんは子宮または卵管(卵子が卵巣から子宮へと通過する細長い管)の両方または、どちらかに進展
Ⅱb期
がんは骨盤の中にあるその他の臓器にまで広がっている
Ⅱc期
がんは子宮、卵管、骨盤内の他の臓器に広がっており、腹腔から採取した液体または腹膜を洗った洗浄液からがんが見つかった場合
Ⅲ期 がんが上腹部、または後腹膜リンパ節あるいは鼠径リンパ節に転移している状態
Ⅲa期
がんは肉眼的には骨盤内にとどまっているが、がん細胞が骨盤外の腹膜に広がっている
(顕微鏡だけで診断可能)
Ⅲb期
がんが骨盤外に広がっているが、その大きさは直径2㎝未満
Ⅲc期
がんが骨盤外に広がっていて、その大きさは直径2㎝以上、
または後腹膜あるいは鼠径リンパ節に広がっている
Ⅳ期 がんが遠隔部位に転移しているか、あるいは肝臓実質に転移している

卵巣がんの生存率

卵巣がんの5年生存率は、すべての病期を総合的に判断すると、およそ61%程度となります。病期ごとに見てみると、下記のようになります。

病期(ステージ)症例数5年生存率
Ⅰ期1,05689.0%
Ⅱ期23167.5%
Ⅲ期98244.4%
Ⅳ期46526.9%
全病期2,95861.5%

全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2019年2月現在)による
※対象データは、診断年:2005年~2009年の最新5年間とした

ただし、これは今から10年ほど前に治療を受けた人が、5年、10年にわたり生存している割合から、換算されたものです。現在では診断方法や治療方法が進歩しており、現在ではもう少し生存率が高くなっていると考えられています。

卵巣がんの5年生存率はひと昔前まで、Ⅲ期やⅣ期の進行卵巣がんの場合で、およそ20%台にとどまっていました。女性器の悪性腫瘍の中でも、予後不良のがんであるとされていたのです。

しかし現在では、診断方法の進歩により、比較的早期の段階で治療を開始できるようになりました。それに加え、抗がん剤も進歩していますので、Ⅲ期やⅣ期の進行卵巣がんの場合でも、生存率は高くなっていると考えられています。

卵巣がんの治療法

手術(外科療法)

がん病巣を手術で除去する療法で、原発巣だけでなく、他の部位に転移した転移巣も取り除きます。がんそのものを外科手術で除去する局所療法です。がんの治療法として最も基本的な治療法です。

卵巣がんは、体外から評価しにくい腫瘍であるため、手術によって組織を取り出すことで、最終的な病期が決定します。
通常は、腫瘍の最大限の減量を目指し、卵巣全摘出、あるいは卵管、子宮を含めた全摘出が選択されます。さらに、リンパ節や周辺臓器も、がんの転移を防ぐために一緒に摘出するケースが多くなります。具体的には、次のような手術方法が検討されます。

<卵巣そのものを切除する>
卵巣がんの広がりや進行度により、片方の卵巣、卵管だけを切除する場合と、両方の卵巣、卵管を切除します。場合によっては、さらに子宮を含めた範囲まで、切除することがあります。

<大網切除>
大網は、卵巣がんの転移がもっとも多くみられる組織です。大網は、胃の縁につながっていて、大腸小腸をおおうように垂れさがっている、大きな網のような組織をさします。これ自体を切除しても、体への大きな影響がないため、必要に応じて切除する方法が選択されます。

<後腹膜リンパ節郭清(かくせい)>
後腹膜に存在しているリンパ節は、卵巣がんの転移が起こりやすい部位のひとつです。転移が疑われるリンパ節を採取して検査することをサンプリングといいます。手術中にがんの広がりを調べるために、サンプリングを行うことがあります。また、リンパ節とリンパ管は系統的につながっている臓器であるため、全て切除することがありますが、これをリンパ節郭清といいます。

<腸管などの合併切除>
腹腔内での転移巣を可能な限り切除するため、腸管などを一緒に切除することがあります。対象となるのは、大腸、小腸、脾臓などです。大腸、小腸などの消化管を一緒に切除する場合は、消化管再建(消化管を再びつなげるなど、消化管の機能を維持する方法)も併せて行われます。

しかし、がんの進行や転移によりがんが広範囲となっている場合や、今後の妊娠を希望する場合は、病期や臨床的な条件を考慮した上で、卵巣を温存しながらがん細胞を取り除く方法も検討されることがあります。

手術(外科療法)についてもっと詳しく見る

抗がん剤(化学療法)

化学物質(抗がん剤)を利用してがん細胞の増殖を抑え、がん細胞を破壊する治療法です。全身のがん細胞を攻撃・破壊し、体のどこにがん細胞があっても攻撃することができる全身療法です。

卵巣がんは悪性腫瘍のうちでも、比較的「化学療法がよく効く疾患」ではありますが、がんの種類によって、効果がみられる薬剤が異なります。そのため、まずは手術を行い、可能なかぎりがん細胞を取り除き、病型を決定した後で行われることが多いようです。

また、卵巣がんによる腫瘍の大きさや、全身状態の状況などにより、先に化学療法を行って、ある程度腫瘍を切除しやすい状態にしてから、手術を行うこともあります。これを「術前化学療法」といいますが、この場合は手術後に再度化学療法を行うことが多いようです。

卵巣がんの抗がん剤は、多くの場合、静脈注射で投与することになりますが、腹腔内に管を留置して、そこから卵巣に向かって直接注入することもあります。

抗がん剤(化学療法)についてもっと詳しく見る

放射線療法

腫瘍の成長を遅らせるために、あるいは縮小させるために放射線を使用する治療法です。がんに侵された臓器の機能と形態の温存が出来ますまた、がんの局所療法であるため、全身的な影響が少なく、高齢者にも適応できる患者にやさしいがん治療法です。

以前は、手術でもとりきれないがん腫瘍に対して、放射線療法が行われていました。しかし最近では、抗がん剤による治療が増えています。放射線療法は、骨や脳などへの転移時にのみ、使用されることが多いようです。

放射線療法についてもっと詳しく見る

免疫療法

上記の三大治療法に加えて、免疫療法は近年「第4の治療法」として期待されています。免疫療法は研究が進められていますが、有効性が認められた免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤などの一部に限られています。自由診療で行われている免疫療法には効果が証明されていない免疫療法もありますので、慎重に確認する必要があります。

免疫療法についてもっと詳しく見る

卵巣がんの再発・転移

卵巣がんは、治療後2年以内の再発が多く見られます。特に、妊孕性(治療後の妊娠の可能性)を重視した治療を行った場合は、再発する可能性が高くなるとされています。 妊孕性を重視した治療は、すなわち卵巣を全て摘出するのではなく、明らかにがんである部分を切除しながら、卵巣およびその機能を残した(温存した)治療法を選択することになります。この場合の再発率は、次のようになると考えられています。

病期グレード再発率
進行期Ⅰa期グレード15.2%
グレード220%
グレード350%
進行期Ⅰc期グレード18%
グレード221%
グレード333%
※日本癌治療学会 卵巣がん治療ガイドライン より作図

一方、手術時に再発や転移を防ぐために、周辺臓器の切除やリンパ節郭清を行っている場合でも、転移を完全に防ぐことは難しく、腹膜播種(ふくまくはしゅ=腹腔内にがん細胞がばらまかれたようになり、腹膜に小さながんが多数生じるもの)が起こる可能性もあります。

再発した場合、治療方法は抗がん剤のみが適応となるため、治療をおこなったとしても、一般的に予後は不良であるとされています。

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