希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進「MASTER KEYプロジェクト」開始

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)中央病院は、希少がんの研究開発及びゲノム医療を推進する産学共同プロジェクト「MASTER KEYプロジェクト」を開始した。(Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registrY Project)

希少がんとは、欧州では「年間発生数が人口10万人あたり6例未満の悪性腫瘍」、米国では「年間発生数が人口10万人あたり15例未満の悪性腫瘍」と定義されるがん種である。日本においては、これまで明確な定義が存在していなかったが、2015年3月に厚生労働省の「希少がん医療・支援のあり方についての検討会」が設置され、(1)概ね罹患率(発生率)人口10万人当たり6例未満、かつ、(2)数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいがん種を希少がんとして扱うようになった。

このように、希少がんの患者は限られるため、多くの製薬企業では希少がんに対する抗がん剤開発は必ずしも積極的に行われてこなかった。そこで国がんでは、希少がん・難治がん等の治療法が限られた疾患に対する研究・診療体制の強化や、ゲノム情報に基づく個々人に最適化された医療の提供、それらに関連した政策提言を、当センターが重点的に取り組むべき課題として掲げている。2014年6月には希少がんの研究、診療に積極的に取り組むため「希少がんセンター」を設置し、現在、中央病院では年間1,000~1,500名の希少がん患者に対し、質の高い診療と数多くの臨床試験を行っている。また中央病院では、2015年11月に米国の臨床検査室の品質保証基準であるCLIAに準拠した遺伝子検査室を設置し、「TOP-GEARプロジェクト」によりゲノム医療の実装に取り組んでいる。このような取り組みにより、希少がんの診療・研究の集約と遺伝子検査体制の構築が進み、今後さらに研究開発、ゲノム医療を強力に推進するため企業参画型の「MASTER KEYプロジェクト」を立ち上げた。

このプロジェクトの中のレジストリ研究部門においては、バイオマーカー情報(遺伝子異常・蛋白発現等)の結果を有し中央病院で診療を受けている次の条件を満たす固形希少がん患者が対象となる。その条件とは、希少がん(年間発生数が人口10万人あたり6例未満)であること、原発不明がんであること、そして5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がん)のうち希少な病理組織型のもの(年間発生数が人口10万人あたり6例未満)であることである。現在は対象患者を固形がんに限定しているが、今後は血液がんへ対象を拡大することを検討中である。臨床試験の概要は、まず上記の患者対象がん種において、バイオマーカー情報(遺伝子異常・蛋白発現等)の結果を有する患者を対象にがん種を限定せず、特定のバイオマーカーを有する患者の集団で、特異的に効果が見込まれる分子標的薬を用いて医師主導治験または企業治験を行う。特定のバイオマーカーがない場合は、より広い対象に効果が期待できる薬剤を用いる。そして、臨床試験から提供される検体を活用したトランスレーショナル研究を研究所との連携で実施する。

「MASTER KEYプロジェクト」は、希少がんにおけるゲノム医療の推進を目指す、世界でも初めての試みであるため、本プロジェクトを通じて、希少がんの患者に、より早く、より多くの新薬を届けることを目指す方針である。今後も国がんでは、本プロジェクトの意義に賛同する11社の製薬企業より治験薬と共同研究費の提供を受け、成果を共有し、プロジェクトを推進していくという。
(Medister 2017年8月7日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進 「MASTER KEYプロジェクト」開始

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