肝臓がん・胆道がんの分子プロファイル比較に関する大規模国際共同研究

国立研究開発法人国立がん研究センターは、米国国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)とタイチュラボーン研究所との共同で、アジア地域および欧米における肝臓がんと胆道がん1046症例の大規模な分子プロファイル(ゲノム・遺伝子発現・メタボローム)の国際比較研究を行った。この結果、肝臓がんと胆道がんの遺伝子発現による分子タイプには地域を超え共通するタイプと、各地域や人種に特徴的なタイプが存在することを確認した。

肝臓がんと胆道がんは、日本をはじめアジアで多くみられるがんで、難治がんとして知られている。これらのがんの発がん要因としては、肝炎ウイルスや寄生虫感染、あるいは特徴的な化学物質(アフラトキシンB1)暴露等が解明されてきたが、詳細な分子プロファイルを用いた国際比較研究はこれまでなされていなかった。これまでの欧米製薬会社主体の臨床開発では、欧米人症例サンプルによる分子データを基盤として臨床開発が進められてこなかったが、果たしてアジアにおけるこれら難治がんの分子プロファイルが欧米人とどの程度一致しているのか、あるいは多様性があるのかについて解析することは、今後の創薬開発戦略において重要な情報となる。

そこで本研究では、日本・タイ・米国・中国・欧州における胆道がん・肝臓がん検体から得られたオミックスデータを集積し、特徴的な分子タイプ(C1、C2等)を抽出した。また、発現データ(Transcriptome)、ゲノムデータ(Mutation)、コピー数異常データ(Copy number variation)、メタボロームデータ(Metabolome)を集積し、特徴的な分子タイプ(subtype)の抽出を行った。

その結果、胆道がんは5つ(C1、C2、ICC-C3、ICC-C4、ICC-UM)、肝臓がんでは4つのタイプ(C1、C2、HCC-C3、HCC-UM)に分類することができた。そのうち2つのタイプ(C1、 C2)は肝臓がんと胆道がんに共通して見られ、それ以外に日本人胆道がん症例でのみ見られるICC-UMタイプと、タイ人胆道がん症例でのみ見られるICC-C4タイプなどが同定された。また、それぞれ特徴的な遺伝子変異等も認められた。各タイプには、特徴的な分子異常も同定され、地域・人種ごとの特徴を踏まえた分子プロファイルによる臨床開発、個別化医療の重要性が示された。

今回の国際共同研究により、アジア地域における肝臓がん・胆道がんの類似性と欧米症例との多様性など地域・人種別の特徴の存在が明らかとなり、アジアにおいて高頻度かつ難治であるこれらのがん種を標的とする臨床開発において、日本人症例を中心とするゲノム・発現データの集積は重要な役割を果たすと考える。国立がん研究センターでは、引き続きこれらの難治がんの克服を目指し、研究を継続する方針である。
(Medister 2017年6月26日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 肝臓がん・胆道がんの分子プロファイル比較に関する大規模国際共同研究 日本人症例における特徴とアジア地域症例との類似性を発見

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