肺腺がんの罹りやすさを決める遺伝子領域発見

国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人理化学研究所、愛知県がんセンター、国立大学法人秋田大学、大阪大学、京都大学、群馬大学、滋賀医科大学、東京大学、神奈川県立がんセンターなどからなる共同研究グループは、日本人の肺腺がんの約半数を占め、非喫煙者や女性、若年者にも多いEGFR遺伝子変異陽性肺腺がんについて、罹りやすさを決める遺伝子領域を発見した。そのなかには、免疫を司る遺伝子領域が2つ含まれ、EGFR遺伝子に変異を起こした細胞に対する免疫反応の個人差が罹りやすさを決めている可能性が示唆された。

肺がんはがん死因の一位であり、日本では年間に約7万人、全世界では約135万人の死をもたらす難治がんである。肺がんの中でも最も発症頻度が高く、増加傾向にあるのが肺腺がんである。肺腺がんは、肺がんの危険因子である喫煙との関連が比較的弱く(相対危険度は約2倍)、約半数は非喫煙者での発症であるといわれている。喫煙以外の危険因子が特定されていないことから、罹患危険群の把握や発症予防は容易ではない。そのため、喫煙以外の危険因子の同定とそれに基づく罹患危険度の診断法が求められており、国立がん研究センターや理化学研究所、東京大学医科学研究所はこれまでに日本人の肺腺がんのリスク遺伝子を同定してきた。

本研究の成果として、6つの遺伝子領域の個人差がEGFR変異陽性の肺腺がんへの罹りやすさを決めていることが明らかになった 。その中には、免疫反応の個人差の原因となるHLAクラスII遺伝子領域が含まれていた。特にHLAクラスII遺伝子産物のうちの一つであるHLA-DPB1タンパク質の57番目のアミノ酸の置換を起こす多型が、EGFR変異陽性の肺腺がんの罹りやすさを決める原因多型の一つと考えられる。HLA遺伝子群の個人差は臓器移植における適合性など、免疫反応の個人差の原因となるものである。また、その個人差の分布は、人種によって大きく異なっている。よって、EGFR遺伝子に変異を起こした細胞に対する免疫反応の違いなど、いくつかの遺伝子の個人差による生体反応の個人差が、EGFR変異陽性肺腺がんへの罹りやすさを決めていると考えられた。

今回の発見により、日本人を含むアジア人に多いEGFR変異陽性肺腺がんの罹りやすさには、喫煙等の環境要因だけでなく、遺伝子の個人差が関係することが明らかになった。これにより、環境要因と遺伝子の個人差を組み合わせることで、EGFR変異陽性肺腺がんに罹りやすい人(高危険群)を予測し、検診による早期発見できる可能性があると考えられる。さらに、肺腺がんの発がんメカニズムの解明にもつながることが期待される。
(Medister 2016年8月22日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 日本人に多いEGFR変異を持つ肺腺がんの罹りやすさを決める遺伝子領域発見 免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与

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