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がん医療水準の「均てん化」を評価する体制構築に向けがん診療連携拠点病院などでの治療実態を調査

国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターは、がん診療連携拠点病院を中心とする全国232施設で2012年にがんと診断された患者31万2381名について、各がん種と支持療法で選定した標準治療・検査9項目の実施率と標準治療を行わなかった理由について調査を行った。

本調査は、科学的根拠に基づいた標準治療に対し、各施設で実際に行われた診療を調査することで、がん医療水準の均てん化の評価体制構築へ向けた検討を行うものである。2011年症例を対象とした試験的調査に続き2度目の実施で、選定した標準治療の対象となる症例を院内がん登録データより抽出し、各施設で行われた診療をDPCもしくはレセプトデータで収集、突合し、標準治療実施率の算出を行った。今回の2012年症例においては、調査対象とする施設を拡大し実施した。

がん医療の均てん化は、がん対策基本法において中心的な施策の一つであり、がん対策推進基本計画においても75歳未満のがん死亡率20%減(平成17年起点)を目指し、喫煙率の低減、検診受診率の向上、がん医療の均てん化を柱に各種の取り組みが行われてきた。しかし現在、20%減は達成困難と予測されており、さらなる取り組みの強化が求められている。がん医療の均てん化においては、これまでがん診療連携拠点病院の整備が進められてきたが、均てん化を評価する体制は確立されておらず、全国における診療の質の継続的評価体制の確立が急がれているのが現状である。

今回の調査の結果、標準治療実施率は、乳がんに対する乳房切除術で再発高リスク症例に対する術後放射線療法が33.3%と最低で、肝がんの肝切除前のICG測定が91.6%で最高であった。これらに全身状態などの患者要因により実施しなかったものおよび高齢を加味すると、9項目中6項目で適切な治療の実施率として90%以上の結果となった。一方、乳がんに対する乳房切除術で再発高リスク症例に対する術後放射線療法は適切な治療を加味しても61.7%、催吐高リスク化学療法前の予防制吐剤投与は71.7%であった。

本来、標準治療を実施するか否かは、ステージや全身状態だけではなく様々な要素により判断されるものである。そのため、これらの結果について解釈することは困難で、今後個別に検討する必要があると考えられる。そのため、均てん化を評価する指標を構築し診療の質(QI:Quality Indicator)の向上を図るためには、標準治療実施率を測定し、数字だけで施設間格差などに注目するのではなく、未実施の理由を詳細に調査、検討し、適切な治療が行われていたかどうかを評価することが重要であることが示された。
(Medister 2016年5月30日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター がん医療水準の「均てん化」を評価する体制構築に向けがん診療連携拠点病院などでの治療実態を調査

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