国立がん研究センター、東京大学、第一三共 新規分子標的薬を共同開発

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)と国立大学法人東京大学及び第一三共株式会社は、血液がんに対する新規分子標的薬としてヒストンメチル化酵素EZH1とEZH2の二重阻害剤(DS-3201b)を共同開発し、成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma, ATL)を含む悪性リンパ腫患者に対し、世界で初めて人へ投与するファースト・イン・ヒューマン試験として第 I 相試験を開始した。

悪性リンパ腫とは血液のがんの一つで、治療抵抗性をもち、抗がん剤により十分な治療効果が得られない、あるいは一旦効果が得られてもしばしば再発が認められてしまう傾向がある。中でもATLは、日本に多い悪性リンパ腫の一型で、原因となるヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)キャリアの数は、日本では約120万人、世界では1,000~2,000万人と推定され、キャリアの約5%の方にATLを発症すると言われている。しかし、ATLの発症予防法や有効な治療法は確立しておらず、薬剤耐性の頻度が高く、予後不良な疾患であることが重大な問題点となっていた。

この度の共同研究で、まずがん細胞を再生する能力をもつ「がん幹細胞」の維持に必須なEZH1/2という二つの酵素が発見され、これらの二酵素を共に阻害することでがん幹細胞を根絶し、治療抵抗性を打破し、再発を抑制することを示唆する研究成果を得ることが出来た。

また、ATLの発症及び進展にEZH1/2に依存的なエピゲノム異常があることが発見された。さらに、正常細胞に比べ、ATL細胞はEZH1/2によるエピゲノム変化に強く依存した細胞であるため、EZH1/2二重阻害は非常に高感度かつ特異的にATL細胞の生存能を低下させることが明らかになった。加えて、ATLの原因となるHTLV-1キャリアの血液細胞にこの阻害剤を処理することにより、感染細胞が選択的に除去されることを見出した。

実際の臨床試験については、今回の第 I 相試験は国立がん研究センター中央病院にて実施するほかに、他の施設での実施も準備を進めているという。
(Medister 2016年3月28日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 国立がん研究センター、東京大学、第一三共 新規分子標的薬を共同開発 悪性リンパ腫(成人T細胞白血病リンパ腫含む)に対する第 I 相試験開始

戦国武将とがん

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