世界初となるリチウムターゲットの病院設置型BNCTシステム

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)は、株式会社CICSが開発したリチウムターゲットシステムに、株式会社日立製作所の子会社であるAccSys Technology, Inc.の直線加速器を用いた病院設置型ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)システムを、中央病院に導入するため準備を進めている。

中性子捕捉療法とは、原子炉などからの中性子とがん組織に取り込まれた中性子との反応断面積が大きい元素との核反応によって発生する粒子放射線によって、選択的にがん細胞を殺すという原理に基づくがん治療法(放射線療法)である。また、放出される粒子の飛程は短く、単位長さ当りに失うエネルギーが大きいため、放射線抵抗性の高いがんにも効果があるという事も大きな利点だ。BNCTは、薬剤(ホウ素製剤)を腫瘍細胞に集積させ放射線の中性子を照射することで、腫瘍細胞に選択的に作用する画期的な放射線治療方法で、副作用が少なく、さらに一度の治療で済むなど、世界的にも注目されている。

リチウムターゲットを用いたBNCTシステムは、加速器で加速された陽子線をリチウムに衝突させることで中性子を生成するもので、人体への悪影響の大きい高速中性子の混在が少ないことが特徴として知られている。一方で、リチウムは融点が低いためシステム開発が難しく、世界的にもまだその実用化には至っていなかった。

国がんは2014年の中央病院診療棟の完成とともに、加速器室、BNCT室(照射)を設置し、この新たなBNCTシステムを導入、性能試験を経て、2015年11月に原子力安全技術センターの施設検査に合格している。今後、物理試験や生物試験を経て、早ければ2016年度中の臨床試験を目指しているという。また、世界初となるリチウムターゲットの病院設置型BNCTシステムの実用化と普及、さらにDDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)を活用した集積性の高い薬剤開発、集積の診断、評価方法等についても検討し日本発の新規治療技術の確立を目指す方針だという。

(Medister 2016年3月7日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 世界初となるリチウムターゲットの病院設置型BNCTシステム 原子力安全技術センターの施設検査に合格

学術の動向2015年6月号
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