十二指腸乳頭部がんの大規模ゲノム解読を実施

GUM06_CG01016国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)は、希少がんである十二指腸乳頭部がんについて、世界で初めて大規模な遺伝子解読を行い、特徴的ながん関連遺伝子ELF3と治療標的となり得る遺伝子異常を発見し、さらに同一腫瘍内の遺伝子の不均一性とその「進化」を実証した。

十二指腸乳頭部がんとは、膵臓内を通過する総胆管と主膵管が合流した共通管が十二指腸に開口する部位にある、乳頭状の部分にできるがんのことで、ファーター乳頭部がんとも呼ばれている。十二指腸乳頭部がんは、元々非常に希少なタイプのがんで、10万人に1人未満の割合でしか発症しないといわれており、今までは疾患概念も明確でなく、また手術や内視鏡切除以外の標準治療法も確立していなかった。

今回の国がんの研究では、十二指腸乳頭部がんに特徴的な遺伝子ELF3の変異が発見された。また、ELF3遺伝子の機能を解析した結果、ELF3ががんの運動能や浸潤能に関連するがん抑制遺伝子であることが明らかになった。

ELF3遺伝子の他にも、腸型の十二指腸乳頭部がんと大腸がんではAPC、TP53、KRASの3遺伝子で、膵胆型の十二指腸乳頭部がんと膵臓がんはKRAS、TP53、SMAD4の3遺伝子で大きな遺伝子変異が見られることが分かった。

さらに、本研究では十二指腸乳頭部がんの組織切片を用いて遺伝子変異地図を作成し、がん遺伝子の不均一性とがんの「進化」を実証することができた。どういうことかというと、がんには様々な遺伝子変異が生じることが分かっており、なおかつこれらの遺伝子変異は一患者(同一腫瘍)において普遍的なものではなく、発がんから治療に至る時間経過のなかで、抗がん剤が効かなくなる薬剤耐性の獲得など、様々な遺伝子異常を蓄積しながら変化すると考えられている。これは、ダーウィン的理論に従い、がん細胞が生存に適するか否かの競合的選択に曝されることで、自然淘汰され「進化」し続けているものと考えられている。

本研究は、日米国際連携により国内及び米国から収集した計172例の十二指腸乳頭部がんの手術検体(凍結サンプル)を用いて行われたものである。本研究成果により、希少がんである十二指腸乳頭部がんの個別化治療や、標準治療の層別化、さらに創薬に向けた基盤データの蓄積に繋がることが将来的に期待される。
(Medister 2016年2月2日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 日米国際連携による希少がんの本態解明研究 十二指腸乳頭部がんの大規模ゲノム解読を実施 がんゲノムの「進化」も新たな手法で実証

胆と膵 33ー3 十二指腸乳頭部癌ー診断・治療の最前線ー
胆と膵 33ー3 十二指腸乳頭部癌ー診断・治療の最前線ー

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