骨を壊す仕組みと、がんとの関係が明らかに

2015年7月21日、慶應義塾大学医学部の堀内圭輔特任准教授、東門田(とうもんだ)誠一特任助教らの研究グループは、破骨細胞の分化過程で小胞体ストレスが誘導されること、さらにこの小胞体ストレスが破骨細胞の分化を増強し、骨の破壊・吸収を促進させることを発見したと公表した。この研究はマウスを用いた実験により解明されたもので、アメリカの科学誌「Journal of Clinical Investigation」オンライン版に、同日付で公開されている。

ヒトの細胞内にある小器官の一つが小胞体であり、細胞が放出するコラーゲンやホルモンなど、様々なタンパク質を賛成する役割がある。しかし、低栄養、過剰なタンパク質の産生、低酸素状態などの条件下では、本来の正しい構造になり得なかった不良タンパク質が蓄積する。これらは、小胞体内に留まり続けることで、その機能を阻害する。この様な状態を小胞体に負担がかかった状態=小胞体ストレスと呼ぶ。

一方、骨は骨形成と骨破壊をくり返すことでその強度を維持している。しかし骨形成と骨破壊とのバランスが崩れ、破骨細胞の活性が高まった状態になると、易骨折性が高まるだけではなく、がんの骨転移を起こしやすくなることが知られている。
今回の研究では、破骨細胞の基となる細胞から、小胞体ストレスを認識するセンサー分子である「IRE1α」を無くした、遺伝子改変マウスを作製して、マウスの骨を解析した。すると、「IRE1α」を持たないマウスでは、破骨細胞の分化能力が低くなり、通常のマウスよりも骨量が増加することが分かったという。

近年、乳がんと骨髄腫は高頻度で骨転移を生じるがん種であり、臨床的にもこれらのがんによる骨破壊の抑制が重要な問題となっている。今回の研究成果により、IRE1α を標的にした新薬を開発することで、がん進展の抑制だけでなく、骨転移における骨の破壊・吸収も同時に制御できるのではないかと期待されている。
(Medister 2015年7月27日 葛西みゆき)

<参考資料>
慶應義塾大学医学部 プレスリリース 骨を壊す破骨細胞をつくる新しいメカニズムの解明 -がんの骨転移に伴う骨破壊を抑える新しい治療法に期待-
「Journal of Clinical Investigation」オンライン版 IRE1α/XBP1-mediated branch of the unfolded protein response regulates osteoclastogenesis

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