がんに直接薬を届けるDDS 新たなタイプの研究が進む

体内に取り込まれた薬剤の行き先(体内動態)をコントロールし、有効性を発揮したい部位にのみ作用するような仕組みを「ドラッグ・デリバリー・システム(以下、DDS)」という。特に抗がん剤は、有効性も高いががん以外の細胞への影響が大きく、さまざまな副作用の原因となることから、この分野でのDDSの研究が世界の研究者の間で進められている。

2015年5月、イギリスのオックスフォード大学を中心とした研究グループは、がん研究を専門としているキャンサー・リサーチ・UKのウェブサイトで、新しいDDS薬剤の研究を進めていることを発表した。それまでにもDDSの仕組みを持つ抗がん剤は多数存在しているが、この研究グループはこれまでのDDSに「ナノテクノロジーの応用」を試みている。

既存のDDSには、抗がん剤を包み込む成分として、金や炭素などが使われる。しかしこれらの分子は、ナノレベルになると不安定になり、特に水の中では不安定になるという問題を抱えている。
研究チームは、この問題を解決する手段として、カーボン(炭素)で出来たチューブに抗がん剤を封入し、これをさらにDNAでラップするという手法の研究を進めているという。がん細胞は、正常な細胞よりも、膜の透過性が高い。つまり、細胞膜の隙間に入り込めるサイズであれば、正常細胞内に入れなかった薬剤が、がん細胞の中にのみ入りこむことができる。研究段階の薬剤はこの性質を応用したもので、がん細胞の中に入り込んだ薬剤は、ラップの役割をしていたDNAが緩み、その中にある抗がん剤が放出されることで、がん細胞にのみ効果を発揮するという。

この研究は未だ理論の域を出ていないのだが、研究者はシャーレの中で培養した肺がん細胞に対する効果を確認できたとしている。次のステップは動物を使った研究を行い、これが成功すれば人への応用が検討される。数年先になるとは思うが、より有効性が高く副作用が少ない抗がん剤の登場に期待したい。
(Medister 2015年7月22日 葛西みゆき)

<参考資料>
CANCER RESEARCH UK – One (really tiny) step closer to nano-sized cancer drug delivery
関西大学 化学生命工学部 機能性高分子研究室 高分子プロドラッグによるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)研究
文部科学省 コラム4 社会を変える新素材「カーボンナノチューブ」

DES・DDSの実務【第3版】
DES・DDSの実務【第3版】

戦国武将とがん

書評