癌の診断に“尿”が使われる時代の幕開けか

(Adult Caenorhabditis elegans by Original uploader was Kbradnam at en.wikipedia)2015年3月12日、九州大学は「尿1滴で短時間・安価・高精度に早期癌を診断する」画期的な手法を開発したと発表した。この研究は、九州大学大学院理学研究院/味覚・嗅覚センサ研究開発センターの広津崇亮助教、伊万里有田共立病院の園田英人外科部長(九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科共同研究員、九州大学味 覚・嗅覚センサ研究開発センター客員准教授)、九州大学大学院医学研究院消化器・総合外科の前原喜彦教授らの研究グループが行ったもので、2015年3月11日付の米国オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載されている。

近年、癌患者の尿から「癌であること(=身体の中に癌細胞があること)」を発見する取り組みとして、「癌探知犬」が話題になることがある。日本でも千葉県で“マリーン”という名のラブラドールレトリバーが、癌患者から採取した尿のニオイを嗅ぎ分ける訓練を受けており、子宮癌、卵巣癌、乳癌、胃癌などの「診断」ができるようになると期待されている。

しかし実際には、癌探知犬の訓練には時間もコストもかかり、探知犬の集中力に左右されることもあるため、実用化までのハードルが高い。そこで広津助教らの研究グループは、嗅覚受容体を約1,200種有する「線虫 C. elegans」に着目し、癌細胞の培養液に対する線虫の反応を調査した。まず、癌患者の尿20検体と健常者の尿10検体を採取して観察したところ、コントロール(組織なし)と正常細胞の培養液ではみられなかった「誘引行動」が、大腸癌・乳癌・胃癌のなどの培養液や、癌患者から採取した尿検体で、特異的に見られることが分かった。
さらに、特定の癌にだけ反応しない線虫株の作製にも成功しており、いずれは尿1滴で癌の有無と癌種まで特定できるようになると期待されている。

現代の日本は、生涯のうちで2人に1人は癌になる時代。この手法が実用化されれば、今後さらに検診受診率向上、早期発見・早期治療につながる可能性も秘めている。今後の動向にも注目していきたい。
(Medister 2015年3月17日 葛西みゆき)

<参考資料>
九州大学プレスリリース 尿 1 滴で短時間・安価・高精度に早期がんを診断!
PLOS ONE オンライン版 A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection

線虫学実験
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