がん転移抑制への期待 熊本大学における研究結果より

熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の尾池雄一教授らの研究グループは、癌の転移能獲得機構を解明するとともに、転移促進因子を不活性化する酵素を発見した。この結果は、2014年1月21日、アメリカの科学雑誌「Science Signaling」電子版にて発表された。

尾池教授はこれまでも、分泌タンパク質であるANGPTL2(アンジオポエチン様タンパク質2)が、肺がんや乳がんの転移を促進することを明らかにしてきた。さらに今回の研究では、骨肉腫においても骨肉腫細胞から産生・分泌されるANGPTL2が、骨肉腫の肺転移を促進することを明らかにした。ANGPTL2が過剰作用することにより、糖尿病や動脈硬化性疾患の発症因子ともなる。癌に関しては、ヒトの乳癌や肺癌の病態において、癌細胞から分泌されたANGPTL2が癌細胞自身に作用し、癌細胞の運動性を高めることが分かっている。これにより、乳癌や肺癌では、癌の浸潤・転移を促進すると考えられている。今回の研究では、同じANGPTL2を分泌する骨肉腫細胞を用いて研究が行われた。

尾池教授らのグループは、ANGPTL2が癌細胞自身に作用することで、組織破壊を行うMMPs(マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化し、癌細胞の浸潤能を増強することを明らかにした。さらに、ANGPTL2は、腫瘍組織における腫瘍血管新生、癌細胞の腫瘍血管内のへ侵入を促進することも明らかになった。

さらに今回の研究では、TLL1(分泌型のタンパク質分解酵素)というタンパク分解酵素がANGPTL2を切断すること、切断されたANGPTL2はがん転移を促進する機能を失っている(不活化されている)こと、骨肉腫患者の腫瘍組織ではTLL1遺伝子の活性化レベルは非常に低いがANGPTL2遺伝子の活性化レベルは高いことが分かった。これにより、TLL1遺伝子の活性化レベルの増強が、骨肉腫の転移抑制に繋がる可能性が示唆されている。また、ANGPTL2は、乳癌や肺癌においても癌転移を促進することが分かっており、骨肉腫同様、TLL1によるANGPTL2の切断を促進することが、癌転移に対する治療法になるのではと期待されている。
(Medister 2013年1月29日 葛西みゆき) Angptl2
Angptl2

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