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更新日:2022/11/19

戦国武将と癌

初めまして!馬渕まりと申します。私、本業は内科医ですが歴女医としまして歴史上の人物の病気や死因などを診断することを趣味としております。
さて、この度「がん治療.com」よりご依頼を頂きまして癌に関するコラムを執筆することになりました。歴史を交えまして気分転換になるような話にしようと思いますのでよろしくお願いします。

癌ってそもそも何?

癌という名前を知らない人は殆どいないと思いますが、どんな病気なの?どうして起こるの?という質問になるとぐっと難易度があがります。癌ができる場所により症状は様々ですが、発生原因はどの癌も同じで、「遺伝子(細胞の設計図)に傷が付く」ことです。普通の細胞は増えすぎないように出来ているのですが、遺伝子に傷が付くと「ブレーキが壊れて、アクセルを踏みっぱなし」のような状態になり細胞がどんどん増えていきます。増えすぎた結果、周りの組織を傷つけていくのです。しかもその細胞は正常の細胞と違ってまともな仕事をしません。仕事をしないくせに栄養だけはしっかりかすめ取っていきます。給料だけをもらい働かない、しかも他人の邪魔をする社員が増えた会社はどうなりますか?潰れますよね。これが癌の怖いところです。

どうして遺伝子に傷が付くの?

遺伝子を傷つける原因は食生活や生活習慣や環境、免疫低下など様々なものがありますが、「加齢」というのも重要な因子です。癌になる年齢を考えると、もちろん若い人でも癌になるわけですが罹病率は60歳頃から目に見えて増え、80歳代になると激増します。近年「癌での死亡が増加している」というニュースを耳にしますが、現代の環境が極端に癌を誘発するものなったわけではなく「医療が進歩し、他の病気で死ななくなり平均寿命が延びたため、癌にかかる年齢まで生きられる人が増えた」のが1番の理由です。

最初にこんなことを書いた理由はズバリ言い訳です。私が得意とする戦国時代は、そもそも癌になる寿命まで長生きできる人は少なく、癌になる前に死んでいます。加えて診断技術も乏しいことから「癌で死んでも分からない」わけでして・・・。それならこんな連載始めるなよ!とのお声が聞こえてきそうですけれども、文献を紐解くと「癌で死んだと思われる」人物は何人かおります。あくまで推測の域をでませんが「戦国武将と癌」のはじまりはじまり~。

伊達政宗の最後は癌性腹膜炎、されど最後まで伊達男。

大河ドラマ『独眼竜政宗』で知名度が全国区になった伊達政宗は、陸奥に勢力をもつ豪族の家に永禄10年(1567年)に生まれました。幼い頃に天然痘にかかり、一命は取り留めたものの、右眼を失ってしまいます。そのため内気な性格の少年だったようですが、青年期に入るとガラリと変貌、15歳の初陣でも手柄を挙げ、18歳で家督を継ぐとわずか4年で周りの諸侯を下し南奥州を支配下に置きました。しかし、この段階で豊臣秀吉がほぼ全国を統一、秀吉の傘下となるのですが、この時、小田原攻めの最中に死に装束で秀吉に会った話は有名ですね。その後、天正19年(1591年)に大崎一揆を扇動していた件で米沢から国替えとなりますが、関ヶ原では東軍に付き、仙台藩62万石の藩祖となりました。

さて、そんな政宗ですが、寛永11年(1634年)、68歳頃より食欲不振や嚥下時のつっかえ感を覚えるようになりました。今なら胃カメラの検査をするところですが、当時はそんなものはありません。その2年後、江戸に参勤交代する途中で病状が悪化し、郡山からは嚥下困難に嘔吐が伴い何も食べられなくなったそうです。江戸に着く頃には腹に腫れ物が生じ、家来にこよりで測らせたところ116.7㎝もあったそうです。相当量の腹水が溜まっていた模様。それでも政宗は絶食状態で約1ヶ月を過ごし、死の4日前に伊達藩上屋敷に家光が見舞いに訪れた時は行水をして身なりを整えて迎えたそうです。享年70。経過から食道癌(または胃がん)とそれに伴う癌性腹膜炎と推測されます。政宗の像や肖像画には小さめですが右眼がきちんとあります、それは彼が「病気とは言え親からもらった右眼を無くしたのは不孝である。像を描くときは両眼を描くように。」と遺言を残したからだそうです。このあたりの話は自書の『戦国診察室(SPP出版)』にも書いておりますのでよろしければご購入くださいね~。
(馬渕まり)

 

食道がんの検査/治療はこちら 胃がんの検査/治療はこちら

馬渕 まり プロフィール


広島県生まれ。
秋田大学医学部卒業、同大学院修了。
医学博士、内科認定医、日本糖尿病学会専門医、そして危険物取扱者乙種4類。現在は愛知県の病院に勤務。
著書に戦国診察室 がある。

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