患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版

『患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2016年版』書評

編集: 日本乳癌学会
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乳がんは、子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がんと並んで、女性にとって悩ましい種類のがんです。がんの治療そのものだけでなく、外見や性生活についても不安がおよびます。本書では、乳がんの特徴や治療法だけでなく、手術跡や脱毛などといった治療にともなう変化、それらに対する対策についても具体的に述べています。

乳がんは身近ながんになりつつある

乳がんは、女性では死亡数第5位、罹患率第1位のがんです(それぞれ2014年、2012年の国立がん研究センターの統計データより)。死亡数も罹患数も年々増加しており、女性有名人が乳がんを告白するなど、身近ながんの一つとなりつつあります。

乳がん検診の呼びかけも、さまざまなシーンで見聞きします。乳がん検診はマンモグラフィ検診とも呼ばれ、日本では40歳以上の女性に対して2年に1回の検診が推奨されています。しかし、日本の検診受診率は近年になってようやく30パーセントを超えた程度であり、乳がんによる死亡数は年々増加しています。一方、欧米の検診受診率は60〜80パーセントに達しており、死亡数も減少しています(数値は本書より)。

本書では、「乳がんは自分で発見できる数少ないがんの一つであり、自己検診が大切」とした上で、乳房のかたちを確認したり、しこりの有無をチェックしたりする方法を紹介しています。そして、「自己検診で乳房の変化を感じた人は、乳がん検診を待たずに、医療機関を受診してください」としています。

では、乳がんと診断されたときには、どのような治療法があるのでしょうか。非湿潤がんであるステージ0から、皮膚や胸壁までがんが及んでいないステージIIIAの間であれば、腫瘍を取り除く手術を行います(腫瘍の大きさによっては、術前または術後に薬物治療を併用することがあります)。がんの広がりが小さければ、乳房の部分的切除で済む「乳房温存手術」を、がんの広がりが大きいときにはすべての乳房を取り除く「乳房切除術」を行います。

いずれも、どのような方法なのか、手術後に乳房がどうなるのか、多くの人が不安に思うことをきめ細やかに解説しています。特に、胸の開いたドレスを着る機会が多い人などは、手術跡がどこに残るかという点は気になることでしょう。その場合には、「皮膚のどこを切るか(手術跡がどこにつくか)を患者さんはある程度希望することが可能です」としており、医師に自分の希望を伝えることの大切さを強調します。手術後に使う下着の種類も紹介しており、より具体的な見通しを立てられることでしょう。

治療にともなう脱毛、性生活と妊娠への不安

また、抗がん剤治療を行うときには、脱毛のリスクがあります。脱毛は、女性にとっては深刻な問題ですが、この点についても本書は数値を示しながら対応方法を紹介しています。乳がん治療で使われる抗がん剤の脱毛率は高く、頭髪の8割以上が脱毛した患者さんは94パーセントという報告があるそうです。本書では、ウィッグや帽子の選び方、眉のメイク方法も紹介しており、安心して日常生活を送るための配慮がうかがえます。

比較的若いときに乳がんと診断されたときには、性生活や妊娠も気になります。本書によると、治療後の性生活には特に制限はないとのことですが、違和感や不快感がある可能性があること、薬物治療中の妊娠は控えるべきだが治療後は妊娠可能であるとのことです。しかしながら、がん再発による生活の変化を考慮すると、治療後2年間は妊娠を避けたほうがよいかもしれないとアドバイスします。

性生活や妊娠は患者さんご本人だけでなく、パートナーにも関わる問題です。乳がんが身近になりつつあるからこそ、乳がんに関する正しい情報を男女関係なく身に付ける必要があります。本書は患者さんご本人はもちろんのこと、パートナーや、患者さんと親しい人にも読んでいただきたい本です。

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