自治医科大学の間野博行教授らの研究グループは喫煙者がかかる肺がんの原因遺伝子を発見した。細胞の骨格たんぱく質を作る遺伝子「ELM4」と、細胞内たんぱく質をリン酸化する遺伝子「ALK」が異常に融合して生じた「ELM4-ALK」が、肺がん遺伝子となることを突き止めた。肺がんの原因遺伝子発見は世界で2例目。早期発見が可能な診断方法が構築できるほか、有力な治療薬開発に道を開く可能性が高まった。成果は11日付の英国科学誌「ネイチャー」オンライン版に掲載された。
間野教授らは喫煙歴を持つ肺腺がん患者の標本から抽出したメッセンジャーRNAを使い新たな原因遺伝子を特定した。喫煙歴のない肺がん患者を含む日本人75人以上の検体を分析した結果、「7-10%の頻度」(間野教授)でELM4-ALK遺伝子が確認された。
すでに肺がんの原因遺伝子として上皮成長因子受容体(FGFR)遺伝子が発見され、これに対する薬剤「イレッサ」が市販されている。だがFGFR異常による肺がんは非喫煙者で発症する例がほとんど。喫煙による肺がんの遺伝子異常は解明されていなかった。
発見した異常遺伝子は同一染色体上にある2種の遺伝子がいったん切れて、再度両遺伝子の一部がつながって生じたものだった。しかも両遺伝子が逆向きにつながるという特異な構造をしていることもわかった。
こうした性質の異常遺伝子は少量でも容易に検出できるため、ELM4-ALK遺伝子を原因とする肺がんを早期に発見する診断法も近々実用化されそうだ。また、化学療法による延命措置すら困難な喫煙肺がんだったが、有効な治療薬開発にも道が開けそうだ。がん細胞の増殖命令を出す「ALK」の機能を抑える薬剤開発が可能で、米国では他部位のがんを対象にしたALK阻害剤の試験が始まっている。
間野教授らは科学技術振興機構(JST)による戦略的創造研究推進事業チーム型研究のテーマとして今回の研究に取り組んだ。 |